「ワーニャおじさん」 公演情報 劇団つばめ組「「ワーニャおじさん」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    アントン・チェーホフの4大戯曲というが、自分は初見である。この劇を現代の日本で上演する理由は何か。”チラシには絶望の過去、忍耐の現在をくぐり抜け、希望の未来を見つめる物語”と書かれている。その内容は、人の本質的な感情は時代を超えて共感する、そんな思いを抱かせる。真面目で平凡に暮らしてきた人間の悩みや苦しみの表現が如実に伝わる。自分は何のために生きてきたんだ、悔悟のような心境かもしれない。

    舞台となるのはロシアの片田舎、有産階級と思しき家族とその家に出入りする人々の会話劇。主人公・パトローヴィチ(ワーニャ伯父さん)は、自分はもっと才能・才覚があるが、本気を出していないだけ、そしてそれは今後も続くという傍観者的な姿。人は少なからず持っている感情を剥き出しに観客に迫ってくるようだ。その意味で今の時代に相応しいのか考えさせられた。
    (上演時間2時間5分 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    劇場入り口と反対側に客席を設けた、いわゆる挟み舞台。段差を設けた中央舞台には、丸テーブルとイス、瀟洒な収納棚、横長イスなどが置かれている。全体的に薄暗く重厚という雰囲気を醸し出している。

    梗概…ワーニャ(堀越健次サン)と姪のソーニャ(福井夏紀サン)、そして母親が暮らす田舎が舞台。都会に住むワーニャの義弟とその後妻が訪れ、滞在した数日の物語。
    田舎暮らしは退屈で惰眠を貪るように描いている。ワーニャ一家だけではなくその知人の医師も含め、皆同じ思いのようだ。都会暮らしの義弟は、この家の者を「怠け者」「わがまま」だという感情を持っている。
    ワーニャは、義弟に特別な感情を持つことになる。ワーニャは47歳の独身。朝から晩まで働きづめの生活をしてきた。そして、義弟のために長年仕送りをして彼を支えてきた。しかし義弟は、ワーニャの妹と死別後、若い後妻を娶りこの家や農園を売り払う計画を持ち出す。ついにワーニャが激高し、義弟に発砲するが、弾は外れてけが人なし、警察沙汰にもならない。そして売却計画は流れ、義弟夫婦が都会へ戻る。仕送りもこれまで通りのようだ。そしてワーニャの暮らしは…何の変化もなく流れるままに。

    ワーニャの不幸は、人生で賭けに出る勇気がなくそれを他人任せにし、善良だけど臆病な人というイメージである。公演で唯一、義弟の若き嫁に言い寄る場面があるが、出入りしている医師も同様の恋していることを知り、悶々とする姿に真の人間味を見る思いである。素直な気持ち、そこに自尊心、自惚れが見えるが、それこそ嫉妬、羨望などの人の裏側にある暗部、本能であり本質を突いた姿であろう。誰の為でもない自分自身の考えであり行動である。
    そんな人の深奥にある普遍的な感情…人の言いなりではなく自立することが大切かも、そんな思いを抱かせる物語であった。

    脚本は翻訳劇であるから別にして、舞台美術・技術は雰囲気があり楽しめた。しかし、キャストの演技力に差があるような…そんな違和感を持ったのが少し残念であった。そんな中で、義弟の後妻・エレーナ(石川久美子サン)がスポットライトの中で行う上半身舞いは幻想的で素晴らしかった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/04/23 21:17

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