まっする東京すぽーつじむ 公演情報 ものづくり計画「まっする東京すぽーつじむ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     板上は、素舞台。箱馬が腰かけやテーブルとして用いられている他、必要に応じて劇中、話の内容に応じたパーティー会場作りなどもされ、自然な流れが作られているので、伏線が、それと感づかれないままに巧みに埋め込まれている。この演出の手際は鮮やかと言って良い。花四つ星

    ネタバレBOX


     物語は、街中のスポーツジム。一般に喧伝されている日本最初のスポーツジムより、ホントは歴史のあるジムが、存亡の危機に瀕していた。建物、設備、インストラクター等、どれをとってもガタがきたジムだったが、存亡の危機が伝えられると多くの人々から基金が寄せられリニューアルすることができた。心機一転、新たにチャレンジしようと考えた二代目は地元TV局にプロモーションヴィデオの制作を依頼した。PV試写などで再会したTVディレクターと二代目の会話から、TV取材が入ることになったが、リニューアルはしたものの、話の内容の殆どが嘘。然しTV局の取材が入るとなれば何としても体面を繕わなければならないと“まっする東京すぽーつじむ”関係者はてんやわんやの準備、打ち合わせなどに追われる。実際に現役で活動しているインストラクターは高齢者ばかりの為、偶々、二代目がTV局スタッフにジムを案内した際、会員になりすましピンチヒッターを務めた小劇団メンバーは即席インストラクターを演じることになり、本物のインストラクターたちは、かつて行われていた交流会の観客として参加することになった。TV局はこの交流会をメインに取材することになっていたのだが、地方局と雖もそこはプロ、すぽーつじむ側の嘘を見破ってしまう。然し、伏線で触れられていた謎が、起死回生の妙薬となった。その謎とは、ジム開設者である必敗のプロレスラーが何故人気レスラーだったのか? という謎であった。ミル・マスカラス、タイガーマスク(殊に初代)、猪木、ブッチャー、デストロイヤー、馬場などが何故人気レスラーだったかをみれば明らかであろう。カッコいいし、強いからと両面揃っているか、強いからであった。因みにこのスポーツジムの名称は“まっする東京すぽーつじむ”プロレスラー“まっする東京”のリングネームから取られた名である。そして名のあるプロレスラーなら皆持っている必殺技としてまっする東京が持っていた技の名をジャッジビンタという。
    学校で苛められたり、孤立して辛い思いをしている子供達の意を自ら受けて、彼ら彼女らの悔しさ、苦しさを解消し優しく包み込んでやっていたのである。この優しさに救われた子供達、或いは社会的弱者たちがどれだけ多く居たことか。廃業止む無しという所迄追い詰められたジムの再建資金を提供してくれた人々こそ、まっする東京に救われた成長後の子供達であった。
     この事実に気付いた優秀なTVディレクターは、番組内容を変更してドキュメンタリーに切り替える。そしてこの国で最も早くできたスポーツジムの縁起として番組を制作する。
     シナリオで嘘を批判的に描くのではなく、その嘘が何故吐かれなければならなかったかに注目し、拠って来た所をハッキリさせて事実を再構成することによって作品を完成させてゆくというメタ構造を持たせた点に今作成功の理由があろう。この文章の最初で述べたように伏線の上手さも特筆に値する。うらぶれた雰囲気を出す為に役者陣もかなり工夫を凝らしたに違いない。劇団員の生活がそれとなく描かれていることも、この論点を保障するのではないだろうか。同時に生きてゆく者の求める答えも提示されているように思う。心を撃つ作品である。

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    2017/04/20 16:25

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