螺旋と蜘蛛 公演情報 神奈川県演劇連盟「螺旋と蜘蛛」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2017/04/15 (土) 14:00

    15日午後、横浜市山下町のKAAT神奈川芸術劇場で上演された神奈川県演劇連盟プロデュース公演『螺旋と蜘蛛』を観に行った。これは、知人の役者・田中敦之が主演を演じ、同じく知人の役者・塚田しずくも出演していた関係からである。


    プログラムによると、この舞台は芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を根底にした話だという。
    死後(なぜ死んだのかは明らかにされていない)に地獄へ落ちたカンダタクマは、過去の自分を強制的に振りかえらされる苦しみを味わう。父親の浮気で両親が別れたこと。その後、再婚(内縁か?)の夫が娘(タクマにとっては妹のアゲハ)を金を渡して抱いていたこと。自分が母親を殺したこと。妹を助けると言っておきながら助けられず、妹は新興宗教にはまっていく。その宗教団体の女性幹部・アラクネが妹の心のよりどころとなっていく。などなどを思い返し苦しむ。そして、最後に地獄に垂らされたロープにすがりつき天国に行こうとするタクマを、アラクネが神に「地獄に落としてください」と決断を促し、タクマは地獄に落ちていく。

    螺旋状に組まれた舞台の高低をを利用してのシーン転換は、劇場の天井の高さを利用したなかなかの出来映え。
    問題は、脚本だろう。過去の自分を振り返って苦しむタクマ…のはずなのだが、その苦しみの度合いが浅い印象を受けるのだ。タクマに次いで演技の高さを要求される妹アゲハも、どうもその生活上の苦しみが表面的。胸にズサっと刺さるような地獄に落ちて当然というような苦しみや痛みというものへの迫力が乏しい。
    また、タクマを地獄に落としてと頼むのが新興宗教の幹部の1人アラクネなのだが、彼女がタクマに対してそうした決断をゆだねられるだけの存在だったのかも微妙。というのも、最後にアゲハの心のよりどころになったのはアラクネなのだが、彼女は新興宗教の集金活動の実態を知っていたという負い目も持っているはずだから。

    という訳で、横浜というスタイリッシュな街で行われた地獄を扱ったスタイリッシュな舞台と言うのが総評的一言。

    脚本はともかく、主演の田中、妹役の小林遙奈 母親役の芝崎知花子の親子の演技は、この舞台の核となるものであり、出演者の中では好演であった。
    また、大道具と照明の質の高さが目立った。

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    2017/04/18 13:14

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