あるいは友をつどいて 公演情報 ハツビロコウ「あるいは友をつどいて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    当事者、関係者、第三(傍観)者という視点がいつの間にか緊密になって行く。その視点が目まぐるしく変化させることで、物語を重層的に観せる。室内劇であるにも関わらず、当時の社会状況・情勢が浮かび上がってくる秀作。

    ネタバレBOX

    舞台セットは、中央にテーブル・椅子というシンプルな作り。それにもかかわらず室内という限定空間に「時間」と「状況」が移り変わる様をしっかり見せる。一方、時として自己内面と対話し物語を深化させる。その観せ方はドキュメンタリー要素(時間経過)を取り入れつつ、全体をフィクションとして包み貫く。

    当時の日本社会に対する不満、鬱積が爆破行為という蛮行(手段)を実行させた。犯行グループの主義・主張を誇示するような行為は、多くの死傷者を出し、経済街の中心を恐怖に陥れた。使命に従った先にある「罪と罰」という大きな代償、その表現は「手記(手紙)」というシンプルな媒体で著す。

    登場人物は6人…事件が起きた時代、現在という時間軸を往還する。事件を起こした背景、その時代の閉塞的な状況の打破する場面、現代という視座から当時を俯瞰した分析、その醒めた場面が対照的。しかし現在の自分が当時の人との繋がりを知らされた時のザワザワした気持の変化。時代は常に繋がっており、そこで生きる人々も何らかの関係性があるかもしれないと覚悟させられる。外的面(社会)と内的面(人間)を絶妙な構成で描いた力作。また沈鬱した雰囲気で時代背景や追い詰められた人を表現する演出も見事。

    役者は、それぞれのキャラクターを立ち上げ、その佇まいは重厚感に溢れ、物語の雰囲気にマッチしていた。少人数だからこそ関係が緊密さを持たせ易く、話の中にグイグイと引っ張り込まれる。もちろん役者の演技力、バランスの良さがそう観せるのである。さらにプラットホームの喧騒、駅アナウンスなどの効果音、薄暗い照明による閉塞感などの照明効果も良かった。

    国際テロの脅威が世界中に広がる中で「事件を過去の遺物と考えてはならない」と。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2017/04/03 21:01

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