BANRYU<蟠龍> 公演情報 世仁下乃一座フェアアート/岡安伸治ユニット「BANRYU<蟠龍>」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    2008年初演、その間に起きた東日本大震災をしっかり本公演(2017年版)へ取り込んでいると思う。その観点の違いを意識させるが、その状況変化もさることながら、本公演は人間の欲望…その普遍的なテーマを役者の演技力で魅力的に観せているところ。常時、役者は舞台におり一人ひとりの演技力と豊かな表情が素晴らしい。

    物語は、青森県下北半島の六ヶ所村にほど近いご在所村の奉納祭へ…。
    (上演時間1時間30分:ぼたんチーム)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、冒頭(上演前)は中央に賽銭箱、奥に神棚イメージ。さらにその奥に衣装や小物を収納してある箱が置かれている。ほぼ素舞台であるが、ダイナミックにして華麗な演技を披露するためのスペースを確保する。上手に太鼓、下手の客席側に三味線奏者が座り、状況に応じて三味線を使い分け生演奏で魅了する。

    この村では年に一度、小さな龍神様の社を奉る奉納芝居が行われてきた。今年の出し物は、十二支に数えられた龍(蟠龍)が鼠にそそのかされた物語…。本公演は3つの話をヒントに物語を紡いでいる。 その1.龍には天に昇れないタツノオトシゴのような龍(蟠龍)もいたという。 その2.その昔、天空と守敏という二人の僧の法力合戦で生き残った西の蟠龍。都の人間にすかされ騙され落ち込んで、流れ着いたのが下北半島。 その3.自分に嫌機がさした西の蟠龍は、神様に願って役者・龍之介(幕末の頃、病で足を失い義足で舞台に上がった歌舞伎役者・沢村田之助をモデル)にしてもらう。そして人気欲しさに願掛けをする。欲が講じて東の蟠龍に…。

    さて、東日本大震災を挟んだ前後の視座として、原発誘致やその後の事故補償交渉の金額まで台詞で喋らせ、人間の強欲を表す。西の蟠龍・龍之介の芸道への貪欲さを重ね合わせ、その行く末を暗示させる。その表現、冒頭の消防団による消化訓練、それは見事な消火活動をイメージさせるが、震災後はその消化活動に支障、空回りするような滑稽さ。人間の欲が村を衰退させるようなイメージ、そして賽銭箱が廃れが…。

    この人間の欲…普遍的なテーマ(当日パンフで、秦の始皇帝の不老不死を引き合いに記載)を大震災を挟んだ視座で明確に表現する巧みさ。社会状況・情勢を背景とし、人間の深奥を生身の人間が体現(パフォーマンス)する面白さ。震災後の混乱、混沌を感傷に溺れさせることなく、演劇として”観せよう”と構造的に捉えているところ魅力を感じる。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/03/26 16:17

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