身毒丸 公演情報 演劇実験室◎万有引力「身毒丸」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    寺山修司作、37年ぶりの再演という。演出のJ.A.シーザー曰く「最後の公演だろう」とは今回僅か5ステージなのに淋しい限り。そんな事とは露知らず、以前映像で見た蜷川版「身毒丸」から(目にした蜷川舞台(5本程度だが)の中でも印象深かった)作品世界に惹かれて、また寺山・天井桟敷直系の万有引力の舞台装置も拝みたく、三階立見席を購入。蜷川演出版に及ぶや否や・・などという危ぶみなど吹飛び、不見識を恥じる暇すらなく魅入った。

    副題は「説教節の主題による見世物オペラ」。音楽(生演奏)の存在は毎度大きいながら、今回は桁違いだ。世田谷パブリックの高さを今回も(「奴婢君」同様)使った壮観な舞台装置を峻険な山とすると、中腹に一列並ぶボイス(バリトン・ソプラノ)7人、傾斜の残るその下の下手にドラム、その下は広く、上手が鍵盤エリア、下手が打楽器(シーザー)とベースが陣取り、さらに舞台面にせり出した裾野には上手に二十五弦筝、下手に琵琶・謡。どのパートの音もクリアで存在感がある。
    そして楽曲が提示するリズム上に、主に平場で展開する「しんとく・継母」の物語に直接関わらない有象無象が「譜面」に従うように移動したり仕事をする。ステージ最も手前の左右に立つ赤いべべの操り人形にいたっては開始から終演まで、人形の動きをやり続けている。黒子要員の男たちを筆頭にコロス的な存在総勢が全て機械仕掛けにも見え、迫力ある楽曲ともども、怪しい世界観を確信的に顕現させた恐るべき見世物であった。
    一昨年のパルコによる『レミング』(松本雄吉演出)には圧倒されたが、天井桟敷はどうやったのか・・その問いに間接的に答えたかのような(私の類推に過ぎないが)圧巻の2時間。
    少年から青年となるしんとくの継母(撫子)への眼差しを叙述した幻想譚ではなく、撫子の側を一人称として描く部分もあり、整然とした解釈を拒んでいる。代わりに得体の知れない「力」「熱」様のものが、ビリビリと流れている。

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    2017/03/19 00:30

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