『SAFARING THE NIGHT / サファリング・ザ・ナイト』 公演情報 舞台芸術集団 地下空港「『SAFARING THE NIGHT / サファリング・ザ・ナイト』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     Midsummer night’s dreamをベースに近未来のオベロン国VSタイタニア国の戦闘を描いた作品だが、上演形態が若干変わっている。(内容的には面白いが、観劇環境はキツイ。体の弱い方にはおすすめしない)

    ネタバレBOX

    場面設定は、戦争が休戦状態にあるヴァーチャル空間、東京である。実際には完全に破壊されたタイタニアの元首都を完璧に再現したということになっており、再現したのはタイタニアのマザーAIである。オベロンもタイタニアも総てのインフラ、生活のケアをマザーAIが策定し、その範囲で暮らしており、現実は一切その中で生きる者達には認識できない。唯、ヴァーチャルな社会で互いの意思疎通はこめかみに埋め込まれているチップを指で押さえ、何が必要かを発音すれば、複雑な指揮系統の指定箇所がただちに反応、レスポンスが実行される仕組みである。観客は先ず、オベロンゲートとタイタニアゲートで二分された後いくつかのグループに分けられ、グループリーダーに従って、会場内移動、其処に準備されている様々なアート作品や担当の設定した設問に応える形で、タイタニア或いはオベロンの勝敗に関わる投票権を得たり、スパイの嫌疑を掛けられたりするのだが、その際に用いられる判定用具はスマホである。指定された時、場所でバーコードを読み込むと各観客毎の結果が各々のスマホに示されるということだ。これで観客も観る立場から、物語に関与する主体に変容させられるという点がミソである。
     ところで、シェイクスピアの作品にも出てくる「インドの子」というタイタニアお気に入りの小姓が、今作にも登場する。但し、インドの子という表現だけが用いられている為最後の最後まで、男の子であるのか女の子であるのかも分からない仕掛けだ。それに、シェイクスピアから借りているのは、夫婦喧嘩とインドの子、或いは2組の若い恋人同士位のもので、現実に演じられるのはAIやIPS細胞を利用した遺伝子操作等、今後28年程度で理論的には可能になるとされる世界である。当然、量子コンピューターも出現しているし遺伝子操作によって生まれる「人間の子」も現実化している訳だが、これら総てが仮想現実である可能性も捨てきれないのは当然である。何故なら、マザーAIが総てをコントロールしているのだから。今作が極めて面白いのは、早ければ28年後にはAIが、人間の能力を決定的に凌駕し、人間は必要なくなる可能性が出てくることである。生産現場であれ、社会の構成員であれ、アンドロイドやロボット、サイボーグ、遺伝子操作によって生まれた「人間」等々が、自然の働きによって生まれた謂わば現在当たり前と考えられているような人間を不要の物と化す世界への当に過渡期を描いていることである。而も観客をバーチャルな空間である演劇空間に否応なく参加させるシステムを構築していることによって、観客というより演劇というヴァーチャル時空の一要素として機能させる点で、他人事ではない、という切迫感を観客に楽しませる作りになっているのである。

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    2017/03/04 17:13

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