たくらみと恋 公演情報 世田谷パブリックシアター「たくらみと恋」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/02/19 (日)

    座席3階A列11番

    価格4,000円

    これを観られたのは、至福の幸運。
    シラーの戯曲なんて日本ではまずやらないだろうから、記念に観ておくかくらいの気持ちでチケットを買った。もちろん、レフ・ドージンもマールイ・ドラマ劇場のことも知らない。外国語の演劇は字幕がついていても、映画と違って同じ画面の中に納まっていないので、やたら首を振らなければならないので、そのしんどさもあって乗り気の観劇ではない。ロシア語なので単語聞いても、全く判らないだろうし。

    この戯曲は、シラーの中でも有名な作品らしい。それも悲恋もののようだ。古典主義の悲恋物は、ガチガチの硬さ(几帳面さ)と形式主義のイメージ。退屈かな、疲れるな、と席についても悲観的な観測。そう、あくまで記念だよ、記念、と私の心の奥底がつぶやいている。

    しかし、開幕10分で杞憂は裏切られる。この舞台は、ひたすらラストの悲劇に邁進するのだが、それが時間を感じさせないくらいにぐいぐいこちらの心を鷲掴みにしていく。そのポイントは、軽快な音楽を使い、ところどころで軽妙(セリフ回しや女性陣のテーブル上のダンス?など)に、笑いさえも挟み、本来は重いトーンで貫かれている戯曲に弛緩と緊張を交互に与え、けして観客を飽きさせない。
     もちろん、タイトルの通り、権力による「たくらみ」は陰湿で執拗で、本来なら見ていて強い嫌悪感をいだかせそうなストーリーである。そこに純真な恋愛感情が翻弄されるわけだが、物語に通底するテーマを削ぐことなく、けして私たちに不快感を与えることはない。(ネタバレに続く)

    この舞台が、わずか4000円で観られた幸運に感謝したい。

    追伸:三軒茶屋駅を降りると、とにかくロシア人、ロシア人。もちろん目当てはこの芝   居。うらやましい、言葉が判って観られたのは。
    追伸2:フェルディナンド役の男性、よほどキスがうまいのだろうなあ。女性陣が演技    離れてうっとりしているように見えた。

     

    ネタバレBOX

    若い2人はもちろん、劇中何度も心が揺れる。
    16歳の女は自ら身を引こうとし、両親の命のために男を騙す(それでも高い純潔性を保つのだが)。そして共に死を選択することすらも考える。
    20歳の男は、父親の女への侮蔑に対して毅然と立ち向かいながら、一方で大公の愛人の誘惑に負けそうになり、だまされたと知らず女に嫉妬しを罵倒する。
    その果てにたどり着くのは、、、

    どの役者を見ても隙が無い。

    なんということだ、けして観衆迎合をするような卑下ない高尚な舞台、厳粛な心中劇。ラストの数分間では、今までの芝居から突然突き放されたように感じ、涙が出た。

    演劇を観て、生きててよかったと思ったのはいつ以来だろう。
    満足度は★がつけられないくらい。

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    2017/02/20 14:58

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