探偵物語1980 公演情報 劇団東京ドラマハウス「探偵物語1980」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    タイトルと同じ、1980年の某TV局の人気番組「探偵物語(主演:松田優作)」、また少し後になるが映画でも「探偵物語(薬師丸ひろ子、松田優作)」も公開されているが、どちらとも違う、別の意味で観応えがあった。

    「探偵物語」というと謎解きがメインのように思っていた。探偵小説・推理小説の類は必ず名探偵が登場し難事件を解決する。その謎解きの過程が面白いのであるが、本公演、表層的には探偵業のうち、案外、地道な活動を描いている。

    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、木枠の立方体を横にし可動させる。レンガ模が描かれた箱数個。それらを場面に応じて動かし、ベルトコンベアー、椅子、テーブル等に見立てる。その組み合わせによって場面の状況が瞬時に分かり、物語に入り込める。親切で丁寧な展開であり物語に集中できるのが嬉しい。

    物語は1980年から現在(2017年)までを描くが、中心は1980年の1年間のみ。父の懇願に応じ大学へ入学したが、その勉学に興味が持てず中退した男が主人公。新聞の求人欄にあった”調査”の文字で入所したのが磯村調査事務所。その実態は探偵業である。仕事には浮気”調査”、企業”調査”など色々な”調査”があった。この物語で主人公が行うのは内偵”調査”というもの。
    物語は、立花製菓という中小企業というよりは零細企業に近い工場で労働組合結成の動きがあり、それを阻止してほしいという依頼である。もちろん労働組合結成は労働者の権利であるが、そこには何らかの意図的なものが感じられ…。この件、漫画「課長 島耕作」のある場面(海外出向時の企業)を思い出す。
    物語は埼玉県を舞台にしているが、この製菓工場の従業員が紹介する蒲田(大田区)など東京の城南地区は中小企業・零細企業が多くあり、日本経済を支えているという社会性の描き。

    さて、内偵が仕事であったが、その実、主人公の”心の内偵”のようにも思える展開である。冒頭、この物語の契機になった(ドイツ)ノンフィクションとしての説明…母を思い、今後の生活に悲観した少年がジャングルジムで縊死したと。その時の心の在りようは子供だったのか、大人だったのかという問い掛け。本公演は37年の歳月をかけて主人公が最後に答える。心の成長は、子供から大人になる歳月に伴うようだ。その時期は明確に現れるのではなく、人それぞれ違う。

    探偵業は、都会(ジャングル)という光景が似合うような気がする。見知らぬ人間同士が身近に存在し接触し合う。地方の共同体では住民の素性が知られ過ぎている。そこでの事件、動機は怨恨・金銭・痴情のもつれなど比較的簡単に特定できる。しかし、都市では人間関係が希薄な分、事件も不可解になる。探偵業の特有な状況が、この物語では潜入先の人との交流を通した人間ドラマになっている。その意味で単なる謎解きドラマより社会性があり、人間味に溢れる観応えのある公演であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2017/02/12 16:50

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