世界 公演情報 Bunkamura「世界」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2017/01/19 (木)

    座席中2階ML列11番

    赤堀作品、本当に大好き!

    どうして、こんなに、人間を描写する力があるのかと、いつも感心するばかり。

    全ての登場人物が、丁寧に描かれ、演じられているので、誰もが、本当に、日常に存在する人物として、舞台上で生きていて、演劇ファンには、たまらない世界観でした。
    きっと、観客の誰もが、自分や、周囲の人間と重ね合わせて、共感してこの「世界」を堪能できる舞台だと思います。
    演劇を愛する全ての方に、深く味わってほしい、秀逸な舞台作品でした。

    欲を言えば、最後のライトを落とすのを、後、3秒遅くしてほしかった。
    風間さんの名演の余韻をもう少し、感じて、舞台を観終わりたいと思いました。

    ネタバレBOX

    63歳で、身勝手な夫に嫌気がさし、離婚を決意する妻に、心底、身につまされて、観てしまいました。
    自己中夫に、「嫌い!本当に、あなた、大嫌い!」と思わず、心情を吐露する妻の気持ち、痛いほどわかります。
    赤堀作品には、いつもパターンがあり、掃除機をかける冒頭シーンや、換気扇の下での気兼ねした喫煙、カラオケを歌いながら、日頃の憂さを細やかに、捨て去るシーンなど、誰もが、日常経験するシチュエーションを描くことで、登場人物の生きる世界が、自分の現実の世界に通じる実感を感じさせる手腕が素晴らしい!!
    どこにでもいそうな、チャラい工員の早乙女さん、デリヘル嬢に、本気で恋心を抱く、気のいいバイト青年の和田さん、いろいろ思いを封印して生きている妻の青木さんなど、脇役も、それぞれ、的確な脚本を見事に、体現されていました。
    赤堀さんの描く人物は、説明台詞などはほとんどないのに、その人物の考え方や習性を、物の見事に、舞台上に投影されるので、本当に、大好きです。

    自分が好きな女性が、友人と恋愛関係に発展したことを知って、動揺する、和田さん演じる青年が、たまたま鋏を手にしていたことで、二人に、被害妄想で恐れられるシーン、挑発されて、本当に刺すかもしれないと、観客は一瞬、緊迫しますが、そのあとのシーンで、田舎の母親との優しい声の受け答えをする姿を見て、あー、この青年は、絶対に、他人に危害を与えるような行動はしないと、納得させられます。
    口もききたくないと夫を疎ましく思っていた妻が、別れる決心をした後で、ふっと夫に見せる優しさ…。息子は、父親が平謝りすれば、母親の決心も鈍るだろうと、たかを括っていますが、そうではなく、妻の見せる優しさは、長く家族として暮らした夫への労りでしかなく、彼女の決意はぶれることはない筈です。
    たった数時間、この「世界」の登場人物を、観ただけで、彼らの内心の気持ちが手に取るようにわかるのです。
    こういう、巧みな作家はそうはいないと、赤堀作品を観る度に思います。

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    2017/01/25 23:47

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