満足度★★★★★
地人会じたい初めて。一昨年だったか芸能花伝舎で観た『島 island』と同じ作家(南ア出身)の作であった。うまい戯曲だ、との感想が変わらず(どちらも二人芝居だった)。一場面を除いて同じ場、二人の会話から「状況」の若干の変化は垣間見えるが、ダイナミックなストーリー展開がある訳でなく、この場所での二人の言葉による、関係の露呈のプロセスが、この芝居の柱と言える。台詞の背後の心の動きが、確固とくっきりと見えて来るのには瞠目した。隙間を埋めるといった瞬間が一秒も見えない(と、見えた)北村有起哉の演技は、「今その瞬間にあるべき状態」にしっかり身を置き、人物に一貫性があり、まるで裸体をさらけ出すように人物が見えて来る。田畑智子の女性は受けの場面が多いが、出すところでの押し出しがあり、感情表現の振れ幅、柔軟さが心地良く、妻として夫との関係が成立する距離を取れていた。ぐっと接近し、親密ゆえに突き放す「自由」。
台詞の端々が鮮烈に光り、それをフックに次第次第に劇に引き込まれた。
一人の小さな人間の「心理の軌跡」が、(己の欠落を補うべき)高邁な何かを求め続ける「魂」の存在を浮き上らせる。
演じる人物をどこまでも裏切らなかった両氏(特に北村)の姿には好感、否、尊敬の二文字も過剰表現でない。と思う。