満足度★★★★
時間堂を2度目にして最終。十色庵は今回が初めてだった。
1度目は一昨年、短くて抽象的な作品だったと記憶。それに比べて、という訳でないが、今作は長編、ローザ・ルクセンブルクを「証言」で浮かび上らせる黒澤世莉氏の作。十分に作家だ。戯曲のメタシアトリカルな構造が演出的にも深められ、演出の放縦な?要求に女優三人+男優一人はしっかり応えていた。柔軟なモードチェンジが後半になる程加速するのに遅れず、(意外にも)手練れであった。意外、とは単に劇の開始時の印象との差だが。そしてこれも自分の中に出来ていた勝手な基準との比較で、最大の「意外」は、硬質な中にソフトな要素をまぶして間違いない作り、つまりレベルの高い舞台だった事だ。作演出家の意図が明快かつ舞台に行き渡っていた。
時間堂という劇団への、これも勝手な印象(HP等での)であるが、様々な試みがそれなりの質で達成されるが、その軸足が「作品」自体にあるのか「演劇的実験」にあるのか、演劇の「是」を広める事にあるのか・・それぞれ「演劇」というものにとって重要な要素ではあるが、どのあたりを「主として」担う主体たろうとするかはあまり気にしていないように見える。「注目される」事を一つの道標とイメージすると、一つ分野でのこだわりと模索が個性を浮上させ、人にそれを伝えるのではないか。・・んな事をこの度湧いた親しみと共に思い巡らした。