痴女を待つ 公演情報 スマッシュルームズ「痴女を待つ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    面白い!…
    「痴女」というよりは「恥除」(ちじょ)のようなイメージの物語。非モテ男は、毎日決まった生活の繰り返しに疑問を持たない。何となく惰性で生きてきたような人生を少し省みると…。
    その、どこかに居そうな男のもがく姿が少し痛く、切ないように思う。作・演出の中山純平 氏はそんな男を厳しくも優しい眼差しで描いている。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台は盆(回転はしない)、6等分に色分け(対面は同色だから3色)しているが、特に意味があるように思えない。それ以外は小物が少し。演技する役者だけが盆上におり、それ以外は、客席とは反対側に半円のように立っているだけ。演技力が勝負だが、皆見事にキャラクターを立ち上げており、見応え十分であった。

    梗概…清掃会社の契約社員として働く男(上松コナンサン)、29歳童貞、趣味はTVゲーム。一念発起し女性と付き合い、童貞を卒業する行動を開始。出会い系サイト、擬似恋愛(レンタル彼女)、特殊浴場など経験するが当初目的は果たせない。そんな時、職場にいる憧れの女性(小林知未サン:東日本大震災で故郷を離れた)が、その同棲相手とうまく行っていないことに気づく。彼女を助けたい、その一心からストーカー紛(まが)いの行為(室内への侵入・盗聴・遠盗撮など)を繰り返すうちに、憧れが強い恋心へ変化していく。相手の男は、職場の女を次々モノにするような駄メンズ(河原雅幸サン:自称ミュージシャン)。この恋の行方はどうなるのか…。

    この童貞男に色々アドバイスするのが”神様”。それとなくアドバイスはするが、成就させるような安易なことはしない。主人公は女性にモテたい、そのくせ女性の目線が気になり、声さえ掛けられない気弱な男。できれば女性の方から声を掛けてリードしてほしいタイプ。少し古いかもしれないが「草食系男子」といったところか。この気弱な男が、女性が自殺しようとした場面で発する台詞…自死したら地獄へいく。この地獄は今と同じ、つまらない人生を繰り返していいのか。いくつかの珠玉な台詞を散りばめ、”恥ずかしさ”のような生き方に変化の兆しが見え始めたが…。

    この公演、ダメ男という人間の世界を扱ったものであったが、時々登場する神様が”社会の窓”へ開陳するように「今の日本は食って寝て暮らせる場所があり、幸せのはずなんだがな。爆弾抱えて行かなくてもいい」など、社会性を絡め幸せの尺度や考え方は人それぞれだと言う。ちなみに主人公が本当に神様はいたのだろうか?という自問自答が意味深で面白い。

    キャストは7人。盆の上で演技するのは多くて4人程度。寸劇の連続のようで心地よいテンポ。設定が清掃会社であるが、盆上以外の役者もハケることはしない。物語から沢山の感情が溢れるが、盆上で熱演する場面とそれを観客同様、客観的に見つめる役者がいる。客席から見れば、盆を通り越してその向こうにいるという不思議感覚。
    もし、舞台セットが設え、出入りのある芝居だったらどのような印象になったのだろうか。そんな想像もしたら楽しくなった。
    ラスト、痴女には言葉は要らない、舌さえあれば…。

    次回公演を楽しみにしております。
    当日の配布物に役名が記してあると感想が書きやすいので、次回はお願いしたい。

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    2016/12/24 17:33

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