満足度★★★★★
KAAT大スタジオ一面が高低差のある「町」で、左右のバルコニーも「路」の延長として役者が移動に用いる。その意味で舞台の隅々までこの世界の秩序の行き渡り感が視覚的にも圧倒して、隙が無い。閉山した「鉱山(やま)」らしく、黒くくすんだ町(というより廃村に近い)の全容、この地にへばりつくように暮らす住民たちの独特な、歪つな、猥雑なエートスが、この僻地にやってきた青年の眼差しと体験を通して顕在化していく。「個と集団」を探る企画の狙いが、作者・松井流に執拗に追究され、答えの無い混沌の中に放逐される。「砂の女」のテーゼがなお探求に値する今の現実があるという点には同意。
休憩10分を挟んで2時間40分。架空の村の生態観察は、言わずもがな変態性に満ち、私には好みである。