執事達は沈黙 公演情報 劇団ピンクメロンパン「執事達は沈黙」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    もう少し納得性があれば...勿体無い
    舞台美術は物語を観やすくするよう工夫して作り込んでいた。しかし内容に謎(疑問)が多く、その展開はまるで霧の中をさ迷うようで手探りだ。
    シェイクスピアの「ハムレット」をイメージさせるが、似て非なるものかもしれないが。ハムレットが父の死の真相を知ってもまだ...To be,or not to be: that is the question.と悩み独白するのと違い、本公演のラストには明確な思いが発せられる。その思いを激白する、演技は熱演なのか怒声なのか判然としないが、迫力は感じられる。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、豪華な執事控え室のような部屋。やや上手側に楕円形のテーブルと椅子、下手側には机、壁には絵画やリースが飾られている。上手側客席側にドアがあるが、執事の仮眠室という設定である。下手側奥に木製ドア。上手側奥、壁の上部にテラスを思わせる空間がある。

    梗概...屋敷の公開見学(観光)に来た婦人たち。それが一転して当時の執事(衣装替え)になる。この屋敷の主人が放蕩息子・コソン(登場しない)に毒殺(噂)され、その息子が父亡きあと、2カ月で結婚式を行う。コソンの結婚披露宴当日の騒動がコミカルに描かれる。執事取りまとめ役・アジン(律人サン)は先代主人の霊を見る。先代は、自分は息子に殺されたとアジンに告白。復讐に燃えるアジンは他の執事たちに協力を求めるが...。
    その執事役の女優陣は個性豊かな役柄(キャラ)を立ち上げ、楽しませてくれた。出来れば、その役柄の意味というか、役割がわかると良かった。

    最大の疑問は、幽霊の存在を一番否定していた執事を幽霊として登場させ、物語を収束させてしまう。それが現実であることを証するためコソンの溺死した嫁も登場させる。
    次の先代主人の霊を見るまでは、温厚であったアジンの態度が一変し、途端に厳しくなる。
    それ以外には、コソンの嫁の悩み、相談事は何か、そもそも嫁いできた理由は何か...など多くの謎があるが、それらは卑小なことと割り切る。

    物語には同性愛(レズビアン)、民族間抗争、飢饉=食欲、軍靴の音などの問題が散りばめられている。ハムレットでは、主人公の奇妙な性格を描きつつ、物語の展開とは直接結びつかないような事柄の省察が描かれている。この公演でも先の問題は観客への問いかけのような気がする。それが物語にうまく絡んでいれば観応えがあったと思うと勿体無い。

    ハムレット同様、この物語では主人公・アジンの内省、その独白が見所であろう。執事の取りまとめ役として「支配」したい、という激白によって幕になる。「執事」は「羊」(家畜)にあらず。その反対の解放、自由を求めているのかもしれない。
    公演には先代主人、その息子コソンは登場しない。その人物像は観客に委ねられている。そこで主人とアジンの主従の関係性をどうのように想像するかによって復讐の鬼と化したか。
    それでも先の疑問は解けない、それ自体が問題だ!

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/12/19 19:09

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