ワンダフルムーン 公演情報 トツゲキ倶楽部「ワンダフルムーン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    人の棘と温かさの両面
    時代設定の妙、ミステリアスな物語で興味を持たせ、トツゲキ流ミュージカルで観せるという、いろいろな工夫が好ましい。
    「人」という漢字は、背を向けているのに、その一方で支えあっている。昭和時代の団地の人間関係、そこで起こる奇妙な出来事を面白可笑しく、ちょっぴり切なく描いた秀作。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    昭和44年の希望が丘ニュータウンという団地が舞台。そのセットは、高さの違う台座2つが前後(都合4つ)に設置されている。上手側(1)と下手側(3)にスタンドマイクが用意されている。シンプルな造作であるが、その上下の動きが躍動感とテンポ感を生み出している。

    梗概...2つの話を従えて本筋が展開する。まず、この団地に越してきた母・立花帆凪(杉村理加サン)、娘・芽里(前田綾香サン)のミステリアスな行動。外出は夜だけ、娘は声が出ない。父親は既に亡くなっている。2つ目は、団地内で自転車による交通事故が発生した。この事故が事件かもしれないと刑事が団地内で聞き取りを始める。事故死した男の尻に咬まれた痕が...。団地の住人によるよからぬ噂話...それが新しく入居してきた母・娘に向けられ...。

    昭和44年といえば、乗用車とトラック等の事故件数が拮抗してきた頃。それだけ乗用車による事故が多くなってきた。本公演ではさすがに団地内で乗用車という訳にもいかず、自転車での事故死として描いている。そこは芝居としての”笑い”と現代の自転車事故という状況の両方を意識しているようだ。コーラス主婦(松井由起子サン、高島素子サン、金井恵理花サン)の衣装は赤・黄・青という信号機(並び含め)をイメージさせている。

    サスペンス仕立では、後方壁幕に月を映し出し...劇中では民俗学として、月の不思議な”力”として「竹取物語(かぐや姫)」「人狼」の話を紹介していた。しかし、アポロが月に行ったのは半世紀ほど前。ウサギも棲んでいない。そういえば、この物語では不思議な薬(実は「整腸薬」)が出てくるが、竹取物語でも不老不死の薬が出てくる。昭和45年には大坂万博で「月の石」も展示された。そういった、いくつもの小ネタ、演出が面白い。

    しかし、本公演の最大の魅力は、初「トツゲキ流ミュージカル!」の謳い文句にある歌であろう。この劇団の公演は下北沢が多い(d-倉庫もある)が、この劇場の天井の高さが聴かせる効果を果たしていたようだ。もちろん出演者(専門家もいる)のボイストレーニングの賜ものであろう。
    物語は、団地の人々の小さな悪意が込められた噂話であるが、底流にあるのは大きな思いやりと優しさ。年末に相応しい”トツゲキ倶楽部”らしい公演であった。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/12/11 15:50

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