満足度★★★★
捕まらなければよし。
法に触れなければよし。いや法に触れてもバレなければよし。いやバレても捕まらなければよし。現実はその通りである。この世は不平等にできている・・という話ではないが、法と倫理道徳をめぐる話ではあった。もっとも水素74だけに「市民」としては平均点以下な、かつ破綻しかけた反面教師共の登場で、そこにイラつきに観に行くところがある。ただ、奇抜な展開のためにか人格破綻スレスレな言動を許す作者が、今回は「比較的」破綻の無い行為の連なりでストーリーが進行。まとまりがあった。といってもやはり矛盾と言おうか、理解困難な言動や人物の変化はある。結局その部分はカッコ内の空白となって押しは弱くなる(背後関係を含めてよりリアルに作られた物語世界は、そこに立ちあがった虚構の力を持つ)。ラストで悲劇を背負う事になった若者は、その証言の信憑性から、実際には罪を免れる事になるだろう。そして当然の事として裁かれるべき者が裁かれる事になるはずだ。・・・という予想が可能で、そうなった場合この物語は何を語ったことになるのか、という事も・・そこまで展開せず不条理の結末に締めくくった事で芝居としてのまとまりはあったのではあるが。
・・そんなこんなはありつつ、役者が各キャラを面白く演じ、部分的にはリアルに迫って、奇怪な人間模様を楽しませてもらった。