満足度★★★★
オイはスターや。
不条理、というよりこの劇団の、ナンセンスは最近のコントや漫才の主流であるボケ役のシュールさに通じる。人としておかしな反応や奇妙な行動でツッコミ役を呆れさせ、憤慨させるアレ。「おや?」「おかしいな」と思わせるタイミングと手順に技が求められ、結句その態度が意表をつく原因に発していたと判明した時の落差=「緊張の緩和」。
奇ッ態も極まった時点で如何にもマトモな提言をする者が出て来るのが、この作家の特徴だろうか。出来過ぎな台詞が、ミスマッチな状況で発せられ、皆をまとめ上げ、美談の主人公のように振る舞い始めたりする。終盤に近づくにつれ何やら「感動的な話」に見えなくもないやり取りが交わされ、熱を帯びて行く。演劇だから「劇的」であるべき、との使命に呼応しているが、皆動機はバラバラで各人が「形」をなぞっているだけの皮相的なありようである。
しかし、信じ続ければ真実になる、との要素も混じって芝居は本当に「良い話」になってしまったのか、それとも「そんな阿保な・・」と突っ込んで良いのかが微妙であったりもする。
過去作「トラックメロウ」を映像鑑賞した印象は、風刺であったものが何か良い話になっている、チグハグさであった。その後生で観た2本は風刺が勝ち、そして今回、困惑が極まった状況ではせめて良い話にして上げても良いかな・・という気にさせる「感動あり」のパターンと見えた。
皮肉の効いたやり取りが、私たちの生きる現実の「根拠のあやふやさ」を奇妙な仕方で炙り出す、この味がこの劇団に人を惹きつけるのだろう。
旅の話。荒唐無稽で、かなり無理のある「認知」における欠陥が、ちぐはぐなやり取りをどうにか成立させる。本気なのか暇つぶしなのか分からないアジテーションが大いに笑えるが、おちゃらけか本気か、という峻別も意味のない事かも知れぬ。言葉は状況・文脈で意味を変えるのであって正しい命題などない・・・と思えば、どんな熱っぽい言葉も冷静に受け止められるし、価値あるものと受け止める事もできる。