満足度★★★★
正義の顔。
『青 Chong』という在日を描いた在日監督による映画の原作か‥?と一瞬思ったが別物だった。がテーマは排外主義、異民族との共存。
このユニット及び夏井氏戯曲作品、ともに初。出来る役者を起用してやった舞台、にしては悪くない役者の佇まいだった。「その芝居」を成立させるだけなら不要かもしれない有機的な繋がり、そこから立ち上る匂いが劇空間に(体内に万単位で居るという雑菌のように)存在するかどうか、私にとっては評価を分かつ要素だったりする。
千葉哲也演出は3作目で、千葉哲也が登場しているような、くたびれた背広にやさぐれ心の主人公に仮託した「男臭さ」の世界が味だと(過去見たもの含め)、思った。
戯曲、話の運びはうまい。二人の男の出会いから「運動体」を立ち上げる流れは、それに乗じて憤懣を吐き出す者らと、彼ら自身の資質が少し異なっていた事も自然に見せ、「行き違い」の悲劇を成立させる所以となっている。
ヘイトが武闘派を生んで過激化する想定の近未来は、今と紙一重だが若干風向きが異なっている「現在」だから、2016年の話として改稿すべきでなかったかと思う。「警鐘」とみるなら時期が違っている内容に思えた。
だが感動的な場面がある。右翼にしてはリベラル感性な主人公、そして本音のやり取りを経たにせよその場で転向するもう一方の元々あったと疑念を抱かせるリベラル感性は、やや現実離れしているものの、そこで勇気ある転進、命がけで暴徒を止めるという決意を彼らにさせる。その彼らを見据える女(メンバー)の顔がいい。