満足度★★★★
模擬でも議論自体に意味がある
会議者の舞台というと、三谷幸喜の「12人の優しい日本人」やアガリスクエンターテイメントの「ナイゲン」を思い浮かべるが、この劇はコメディではない会議劇。しかし、シチュエーションなどによる笑いはなくても、会議や議論する様というのは会話劇の恰好の材料であることに変わりはなく、それぞれの立場でぶつかり合う登場人物たちの思惑や感情、移り変わる会議の趨勢がテンポよく繰り広げられ、非常に面白い劇だった。
現実の当事者たちの会議ではなく、大学のゼミのモックカンファレンスと言う設定により、劇が2段構造になっており、それぞれの立場の登場人物の意見や発言が、本当の感情・本音とイコールに必ずしもならないという「議論」の本質を強調することになっている。
「超高齢化社会」という今まさにそこにある大きな問題を議論の題材にしており、劇として脚本として「これがこの劇での正解だ」とう姿勢で観客にぶつけるのではなく、誰も間違っていないそれぞれの立場の登場人物たちの意見を観客にぶつけることで、「知る事」「考える事」「他の人の考えを聞くこと」という議論や会議の、話し合うということの意義を観客に持たせることができていると思う。特に席も近いし、客席も多くないのでそのぶん自分も本当にオブザーバーとして参加しているように思えてきて、自分の意見を発表したくなってしまうくらい、考えて議論に感情ともども入り込むことができた
劇自体の完成度という点では、ちょっと気になる所もあったけど、面白い劇だったので、観客が少なかったのが非常に残念だった。世の中に会議とか議論好きってやっぱりそんなに多くないのかなぁ。。。