時代絵巻AsH 特別公演 『白瓊〜しらぬい〜』 公演情報 時代絵巻 AsH「時代絵巻AsH 特別公演 『白瓊〜しらぬい〜』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    会津魂を観る
    幕末の物語は、その視座によって描き方が変わる。例えば、新撰組などは暗殺集団と言われ、後には賊軍という汚名を着せられても魅力ある物語になる。本公演で描かれる会津藩・白虎隊は日本史の教科書に載るほどであるが、その魅力は何であろう。
    それは、混迷を極める幕末において愚直なまでに至誠を貫く姿...それも十代の少年たちの一途な思い、そして悲劇性が後世の人々の心を打ったのかもしれない。本公演では、そんな思いが十分伝わる物語になっている。

    脚本・演出は灰衣堂愛彩女史、そして出演者は全員男性である。女性の視点で捉えた男(武士)の世界...それは紛れもなく会津藩精神を体現しているようであった。

    制作に関して、灰衣堂女史自ら場内入り口で当日パンフを配付し、前説・上演後挨拶など丁寧な対応をしているのには驚いた。

    ネタバレBOX

    男優たちは十代ではないであろうが、少年に観えてしまうほど熱演であった。幼馴染のようにして育った仲間、その無邪気な行為も会津藩追討によって激動の渦に巻き込まれる、いや自ら飛び込んでいくようだ。
    「ならぬことならぬ」愚直なまでに至誠を貫く。厳しい風土環境の中で純粋培養のように育った若者。しかしそこに秘めた不屈の魂と人を思い遣る精神がしっかり描き出される。

    幕末史実を踏まえ、京都守護職の任務、大政奉還後の会津藩の立場などを分かり易く説明(台詞)する。歴史の断面と人間(仲間、家族)という内面を上手く取り込み、重層的に観えるような。

    梗概...新政府軍の侵攻の前に、各方面に守備隊を送っていた会津藩は少年で編成する白虎隊までも投入するが敗れた。戦闘シーンでも、新政府軍の大砲に比べ、会津藩の武器は旧式の小銃のようである。隊長が逃げたように描いているが、いずれにしても少年たちだけになった。そして城下町で発生した火災を若松城の落城と誤認した白虎隊士中二番隊の隊士の一部が飯盛山で自刃する。
    このシーンへ繋ぐため、会津藩の家訓等が随所に織り込まれている。死に遅れることによって卑怯者・臆病者と言われ生きることへの恐れ。未練者にならないために死に急いだかもしれない。それこそ少年ゆえの純粋さだったと思う。それらの感情描写が実に繊細に観て取れる。

    舞台セットは、上手側に城内の一室、下手側に段差のある平台。場面転換はその立ち位置で屋内か屋外かが分かる。
    本公演、衣装、小道具(刀など)は時代を感じさせるが、髪型や登場人物(土方歳三役)によっては現代風で違和感がある。すべてを外見で観せる芝居でないことは承知しつつ、少し勿体無いように思えた。

    生きることを切に願った父親のラストシーン...実に印象的であった。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/09/11 10:29

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