風は垂てに吹く 公演情報 テトラクロマット「風は垂てに吹く」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    映像的空間を演劇的に演出...見事!
    「飛ぶ」「狭間(はざま)」という2つのキーワード、それを色々な人物等を登場させ「あの人」に思っていること、伝えたいこと、そして聞きたいことを描き出した感動作。その描き方はもちろん、舞台セットは映像の世界のようである。一見抽象的に観えるが、それが自分の中では想像する楽しみになっていた。
    演劇は、観客に楽しんでもらうことが大切。自分にはとても魅力的な芝居であった。
    (上演時間2時間)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、吉祥寺シアターの天井の高さを利用した空間処理が巧い。セットは、羅針盤かローマ字時計のような円形の中にグライダー模したものが置かれている。そこにはいくつもの太紐が吊るされ、結ばれている。また円錐台形の向月台のようなものもある。それら全体を半囲いするようなドーム型骨組み。客席上部には帯状の薄布4枚。

    梗概は、黄昏時の天文台の廃墟-そんな場所へ彼女はきた。夜明けに現れるという伝説の雲、モーニング・グローリーの絵を描くため。そして、TLS(難病)によって「(意識は体に)閉じ込められた」夫との「つながり」を取り戻すために...。日が落ちて、夜が訪れるその逢魔ガ時、廃墟は活気ある工房に変貌する。

    色々な人達等...特攻隊員や翼の発明家、しゃぼん玉を吹く少女(野口雨情・作詞)、世界的女性パイロットとナビゲーター、宇宙船に乗り込んだ犬(!?)、砂漠に不時着した飛行士(星の王子さま)など、国籍、年代などバラバラ。そこに共通するのは「飛ぶ」である。

    それぞれが抱えた(忘れたい、記憶に封印したい)想いが語られる。ネガティブな面は夕暮れから現れる。ポジティブな面(実は楽しかった思い出、「しゃぼん玉」2番歌詞など)は夜明けから、という1日を昼夜という大括りで描く。順番は「暮れ」から「明け」という推移に喜びが感じられ印象的。それらの感動はラスト...病室シ-ンへ引き継がれる。先に記した「飛ぶ」と「狭間」の意味が氷解する様が観てとれる。

    昼夜の狭間...「光」と「闇」が溶け出す瞬間、その薄暮時だけに見る夢のような物語。その演出はカット・バックするような時空または異空間を往還する。その観せ方は、映像のコマ送りのように時間軸を巻き戻す際、小刻みにステップを踏みコミカルな動作で体現させる。また「ポジ」「ネガ」の関係は映像イメージそのもの。そして舞台美術に合った照明効果の演出は見事。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/08/25 19:03

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