満足度★★★★
谷中村の夜は更けて
初見の劇団で若手らしい様子だが、谷中村とは・・。
芝居は「楽園」の狭い空間にフィットする、細かな伏線が役者のしぐさに手際よく放たれる、目立ての利いた芝居だった。田中正造の没後間もなく、立ち退きに応じざるを得なくなった村人が、離散の前夜、古くからの風習「庚申待ち」で夜を徹するその一夜の物語。「村」社会らしいどろどろした内輪騒ぎが終盤に加速して暴露合戦の様相だが、その背後には「鉱毒」があり、それゆえの差別があり貧困がある、その八方塞がりの様は「とどまるも地獄、出るも地獄」の、放射能毒におかされた福島の現状に重なった。
ただ、史実を扱った、テーマ性のある芝居をやるならもっと田中正造の実際の足跡にも言及され、「今」と地続きの「歴史」をそこに感じたかった。もっともそうなるとこの芝居の面白みは半減するのかも知れないが。
暗鬱な雰囲気、「楽園」の使い方もうまく、大柱も生かした演出を施していた。里芋の煮っ転がしが皿に一個ずつ割り当てられ、お茶で食す場面がよい。貧しさの中の祝祭感が活写されていた。