満足度★★★★
混沌の中の悲しみを幸せに変えたい
招待券が当たったので、ナイスコンプレックスという初めて観る劇団の公演に行ってきた。『かぜのゆくえ』と題された舞台である。場所は、東京・中野のザ・ポケット。
さて、舞台の説明をどうしようか悩む。
なかなか混沌としているのである。
2050年の東北の海沿いの町が舞台。そう、東日本大震災の影をを未だ背負って生きている人たちの住む町は色で言えばグレー一色。その町を海から山に吹き抜ける風は、人々の生活、そして心の動きを見通していた。
結婚前夜、最後の挨拶に娘が「風はどこから吹いてくるの?」と母親に行くシーンで始まる舞台。これが、全体でいうなら起承転結の起の部分。
その風の吹くく先にあるクジラ山の電話ボックスの電話がカイトという青年になって、人々が胸にしまって生きてきた心の思いを解き明かしていく承。
その中で、飲酒運転の罪をかぶって助けた女性・ミテルとの心の交流と愛情の生まれが転。
そして、再び娘と母親の会話となる結。
舞台の中心は、カイトが人々の心から様々な色を咲かせる心の扉を開くこと。そして、その集大成がミテルとの出会いと理解し合う課程。そこに、カイトも予想しないほどの色彩豊かな花がさいたこと。おして、それが愛情と言うこと。
約2時間の舞台に劇的な高揚はないけれど、何か心にサワサワと波を起こすというか風を起こすというかそういう混沌としながらも心引かれる悲しさを感じさせる舞台。脚本の力もあるが、役者の力も物を言っているはず。終盤、客席からすすり泣く様子が多々窺い知れた。まさに、納得できる舞台だからであろう。
役者は全員芸達者。個々では、主役とも言えるカイト役の鈴木勝大と。モリオカ ミエル役の八坂沙織の名前を挙げておきたい。よい劇団を知ることが出来て、心地よく劇場を後にした。