満足度★★★★
客演陣の熱演に助けられた一面も
昨年後半、怒濤のごとく炭鉱三部作の連続再演を行った劇団桟敷童子が、中核メンバー数人の退団を経ての新作現代劇を上演するというので、6日午後にすみだパークスタジオ倉に出かけてきた。もちろん、知人の役者・もりちえは、今回重要な役をこなしての出演であった。
舞台は現代の九州。2年前に病院から失踪し行方不明になっていたものの、自宅近くの蜜柑山でみつかり、その山で運営されている自然農園「Bee」で保護された元中学教師で認知症の父親を引き取りに訪れた三人の子供たちと、自然農園の従業員(そのうち一人は失踪した父親の教え子だったことから身元が判明)との交流、父親を巡る人々の感情的な行き違い、理解無理解などが入り交じった複雑な、本当に複雑な日常生活が描き出され、年をとることとは何なのか、生きていくと言うことはどういうことなのか、家族の結びつきとはどういう物なのかを何気に、時に深く問うたなかなかの秀作であった、
特に父親と母親の板挟みになり、晩年は父親の面倒を見ていた失踪した滝雄の長女・智美役のもりちえ、Beeの代表・植村役の尾身美詞(劇団青年座)、そして肝心の失踪した本人・滝雄役の山本亘はなかなかの熱演だったし、滝雄の長男・信雄役稲葉能敬も頑張っていた。
いつもとは違う客席と舞台の設定は、終盤に舞台にあった軽自動車を滝雄が運転して舞台から建物外に移動するためであることがわかり、演出面での苦労・工夫もいつもながら感心。
ただ、やはり結末のもって行き方の難しさと滝雄の動き・台詞の処理の仕方にもう一工夫あっても良かったような気がした。おそらく、脚本の東もそのあたりは苦労したのではないだろうか。