満足度★★★★★
ココロコロガシ
まず、度肝を抜かれたのは、あの小さな空間であれだけの高速で激しいアクションと迫力と、うわーっと押し寄せる役者さんたちの熱量と思いだった。
心は何処にあるかと問われたら、大抵の人は、胸を指し示すだろう。しかし、確かに其処に心が在ることを確認した人もまたいない。
目に見えないもの、その在りかを目で確認出来ないもの。けれど、『星の王子さま』も言うように、見えなくても確かに在って、「大切なものは目に見えない」のである。
『ココロコロガシ』は、その目には見えない「心」をめぐる物語。
人の心を喰い尽くし、吸収して自分の力の素とするマギーもまた、その切っ掛けになったのは、大切な友を助ける為だったのに、人の心を喰い尽くして行く内に、大切なものを自ら壊し、その事に傷つき、邪悪な存在へと変わって行った悲しい存在でもある。
マギーによって、次々と憑依された人達はトラウマを思い起こさせられ、心を壊されそうになり、喰い尽くされそうになりながらも、心を喰い尽くされなかったのは、人は、そのトラウマと対峙し、自ら乗り越えた時、心は強くなり、何度も自分の力で立ち上がって来たからである。
想いは人を変える。想像すること、こうなりたいと願うこと、自分の為だけでなく、大切な誰かを守りたいと強く思った時、人はとてつもない心の強さを手に入れる。
人を思うこと、自分の思いを信じること、 それは心を変え、強くする。
強い思いはやりきれない、悲しい現実を変える力がある。
その強い思いを乗せた言葉で紡がれた物語は、世界を変える力があると思っている。
ココロを悪い方へとコロガシ弄んではいけないけれど、良い方へと転がして行けば、平和で幸せな世界になるのではないだろうか。
その事を、全編を貫く笑いの中に、しっかりと紛れ込ませながら、きちんと伝えている素敵な舞台だった。
文:麻美 雪