AOI NO UE 葵上 TOMOE 巴 公演情報 (有)Yプロジェクト「AOI NO UE 葵上 TOMOE 巴」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    今を捉えた内容
    「AOI NO UE 葵上」と「TOMOE 巴」の2部構成であるが、その底流には共通した現代の問題が描かれている。両方観ると分かるが、葵上だけだと、そのタイトルから源氏物語そのものを想起する。確かにその描きが濃いが、あくまで現代、それも今を捉えたものである。
    テーマは明確であり、それを印象的に描くという演出の工夫が観られるが、少し中途半端な感じもする。それでも物語に強い牽引力があり、最後まで飽きさせない。
    (上演時間2時間20分 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、三間四方の正方形の舞台。その角には柱、客席正面奥には囃子方(能管、小鼓、ピアノ)、上手にコロス(地謡合唱隊)。下手には、あの世とこの世を結ぶ橋掛かりの通路がある。

    「AOI NO UE 葵上」...新興宗教「光の源」は信者を増やし、国政にも影響を及ぼす。教祖、光(ひかる)の正妻葵(あおい)は懐妊したが、子宮に重度疾病が見つかり余命宣告がされる。呪術使いの巫女によれば、そこには六条(光の愛人)の生霊が見え、その霊を退治する。そこに表れた真の姿は...。
    源氏物語「葵上」が材か。

    「TOMOE 巴」...選挙を控え、憲法改正・悪論議、特に憲法9条 自衛隊のあり方が選挙の争点。そんな時期、墓参り愛好家(墓マイラー)達による有名人の墓地巡り。そこに現れる三島義仲(由紀夫)の愛人(男)の亡霊が現れ、自衛隊市谷駐屯地での三島割腹自殺の光景。義仲と最期を共に出来なかった恨み言...。
    能「巴」が材...木曽義仲の愛人にして女武者
    「AOI NO UE 葵上」と「TOMOE 巴」の間に狂言回しならぬ、現代漫才が挿入される。

    両方の底流にある現代の政治(社会)問題への問いかけ。そのテーマは明確であり、それを能楽×現代劇×音楽劇として魅せる。古代の物語を現代に置き換えて...そこには少しの融合、融和も見られない、中途半端な感じがした。

    古代の物語の部分は能楽...その夢幻能であるが、現代シーンでそれを行うと違和感がある。また能面も上部分(目鼻)だけを覆うもの。音楽は和楽器と洋楽(ピアノ)の音質の違いもあり調和していないと思う。「AOI NO UE 葵上」も「TOMOE 巴」も、それどれの描きの中で「古代」と「現代」を区別し、別々に描いている。それゆえ分離した印象であり、その演出のために能楽と現代劇をあてがうようだ。そしてその音楽も古代=和楽、現代=ピアノのような。もっと古代、現代を融和してモチーフが垣間見える程度でも良かったと思う。

    しかし試みは面白く、違和感を感じつつも飽きることはない。逆に物語の展開に興味津々、楽しめる。その意味でなんとも不思議な公演であった。まさしく”現代能楽劇”なのかもしれない。それを体現した役者陣の演技は見事。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/06/23 11:54

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