満足度★★★★
「会話」と「展開」の理想的な関係
ちょっと謎な台詞の意味が少し後で解かれる、良いリズムが「台詞のよさ」で、そこから発展する人物の行動が全体として関連ある図を描くようであるのが「プロットのよさ」、描かれた物語が普遍性をもち、真実味を帯びて観る者の心に刻まれるのが「良い戯曲」、・・などと知ったような事を言ってみる。『エダニク』は展開が面白い。だが印象としては静的で、間合いに漂う「心模様」に注意が向く。そして説明されない空隙が何かで満たされている、そんな雰囲気は好みだ。
屠場というだけで何か社会的なテーマを嗅ぎ取りそうだが、それはむしろ背景となって滲んでいて、ことさらにほじり出すようなやり取りもあるが、それはそれ、と。ある現実が切り取られたリアル感と同時に、飛躍のある部分はフィクションなのかそうでないのか、という微妙な線も、悪くない。演じた三男優への拍手。
三鷹芸文のキャパは少し大きく、客席がちらほら空いていたのも勿体無い。