アベベのベ 2016 公演情報 劇団チャリT企画「アベベのベ 2016」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    初日・チャリT3度目。
    10年後の再演では時代が巡って・・。政治ネタを軽妙に、問題抽出を目的と割り切った昔で言う所の辻芝居?のテイストだろうか。昨年40min競演でIS人質殺人事件を扱った「イスラム国がやってくる!? アラ!アラ!アッラー!」の情報密度と説明の判り易さには、時事ネタ紹介の演劇活用の見本をみるようで感心した。
    さて今回の再演、第一次内閣当時のようには、「アベ」を軽く笑えない。現在のアベの「危険」の象徴は改正憲法自民党案であるのは間違いなく、ただ、挿入した感のある部分は、芝居として勿体ない。
    「ブラック企業」の呼称は10年前はまだ無かったと思うが、コンビニのバックヤードを舞台に描写された非正規雇用(バイト)たちの職場模様は、時代ギャップを感じさせない。ただ、コンビニ業界のブラックな側面はこの10年で随分暴露され、チャリT的にはこれ一つテーマにしても一作できるのではないか・・その点、今作では「コンビニ」本体は背景に収まり(その中で人は身勝手だったり困ったりしてるが)、批判を免れている風だ。
    休憩中は電話を絶対取らない(人が取ろうとしても阻止する)慣習も、観客的には違和感なのだが、「振り」をどう「処理」するか、という部分は、流されてしまった感もある。
    だが、政治ネタである事が明白な芝居が、居心地悪くなく最後まで見れてしまうのは、希少かも知れない。

    ネタバレBOX

    登場人物のほとんどはコンビニのバイト。元バイトも2名登場し、その一人は、向かいに出来たセブンの店長、元酒屋の息子で、遊びに来てはだべって行ったりする。彼はこちらの「店長候補」(主人公)と同級生で、張り合ったりしている。
    さて、国民投票の日を前に、無党派が多数だが、(改正)賛成派はあからさまに賛成投票を訴えている。一方自覚的な懐疑派は一人のみで、学生。しかし彼は「自分が思った通りに投票すればいい」と、決して反対を訴えない。ただ、幟を持ってやってきたバイト(その時は国民投票改憲賛成を訴える青年団?の一員として登場)に対しては明快に反論して相手を論破してしまう。ここなのだが、いささか教科書的な反論にとどまった感があった。客観的な正論を述べるのだが、改正の結果大事なものが損なわれる場合、その事態を憂う感情を抜きに、ただ誤りをただし「正解」を述べるだけ、という態度は実際には考えにくい。もしそういう態度に見えるとすれば、戦略的にそう振る舞ってい る、自制していると考えられ、この学生はそうしている、との解釈をするかしないか、という事になるのだが、むろん、かような複雑な演技を求めるような芝居ではない。
    淡々と矛盾を論破すれば、「改憲が正しいと単純に信じたアホ」は面食らうかも知れないが、本当の「敵」までの距離は遠く感じられる。この芝居を観て改憲に疑念を持ち始める人がいるかも知れないけれど、この問題は論理的に正解か不正解かを問う問題ではなく、人間的なあり方を(現に事実として奪われているその上に)制度として手放す事を、あなたが選ぶか選ばないか、行動するかしないか、という問題になる。もちろんその視点を作り手は踏まえているに違いないが、この論破の場面は、小気味よい勝利の場面、と「こちら側」は見ても、「どちら側でもない者」にはどうだろうか。感情の伴わない正論は胸に刻まれにくい。そこも勿体なく思われた一つだ。チャリTのテイストとの兼ね合いで難しい所だが。

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    2016/06/12 01:23

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