青森に落ちてきた男 公演情報 渡辺源四郎商店「青森に落ちてきた男」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    柔かさの中にある力強さ
    畑澤聖悟作品、毎回事前知識は皆無で観劇する。たいがい「観る」と決めているのでよほど暇でもなきゃHPを覗く事もなく、まして今回のようにチラシにもお目にかからねば知りようがない。直前に知って慌てて調整し、観劇した。無理して良かった。やっぱりよかった。
    クリスマス禁止法や、(ちゃんと降霊できる)イタコや、原子力ロボットやタイムカプセルなど突飛なアイテムを介在させた芝居が多い。「海峡の7姉妹」に至っては皆「船」役である。だが、見入らせる芝居を作る。現実世界の暗喩、また暗示らしい事が明からさまで、謎解きは開幕から始まっている。今回のアイテムは「鬼」であった。

    戦争を扱った今作が、戦争「遂行」に寄った人物に対して一切、「英雄的」解釈を施す余地を与えず、リアルに、シビアに醜さを抉り出した所に、今回この「演劇」が打ち出そうとしたものを読み取る。今作では「謎」はゆっくりと解かれ、終盤ようやく見えてくるものがあるが、スッキリとまで説明せずに終わる。カタルシス効果はこのテーマにそぐわない、とするのが正常なのだと思う。

    千秋楽は12時開演。これからバラして撤収し、青森での明日からの仕事に備えるのだろう。これで「食ってる」訳ではない人達であり、食う事を目指してるのでも恐らくない。近くの席の青年が気持ちよく笑っていた。そして泣いていた。満席のスズナリで、健全な感覚にふと覚醒される、ナベ源の日。

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    2016/05/09 00:25

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