シュワロヴィッツの魔法使い2 公演情報 メガバックスコレクション「シュワロヴィッツの魔法使い2」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    140年目の決断
    たった1回しか使えない魔法を、いつ、誰のために使うべきか
    140年間悩み続ける魔法使いの話は、以前その1を観た時に
    その哲学的な問いかけにたじろぎ魅せられた。
    死者を生き返らせるとその力が受け継がれ、同時に自分の命が終わる、
    という設定が深い。
    生まれつきではなく、前任者の魔法使いから継承させられた(?)ゆえの疑問の末に
    魔法使いが出した答えは意外なものだった。
    キリマンジャロ伊藤さん演じる思慮深い魔法使いが魅力的。
    それだけに彼の決断の理由をもっと聞きたかった。

    ネタバレBOX

    マグ(キリマンジャロ伊藤)はトロイとエバの兄妹と共にりんごの木を育てて暮らしている。
    そこへリージャ(未悠)という少女が死んだ妹を抱えてやってくる。
    彼女は、疫病が流行ってほとんどの住民が死んだり逃げ出したりした島から船で来た。
    妹をよみがえらせるため魔女に心を売ったリージャは、魔女に言われるまま
    毎日1つずつ生きた人間から心臓をえぐり取っていた。
    魔女の本当の目的は、マグの魔法と永遠の命を自分が受け継ぐことだった。
    そのためにマグの周囲の人々を殺し、決断を迫る。
    マグと魔女の思いがけないつながり、そして最後にマグが下した決断は…。

    一度死んだ自分を、魔法使いの妻が蘇らせた、それでマグは魔法使いになった。
    それから140年も、大勢の人間から「助けてやってくれ」と乞われる度に
    「今魔法を使うべきか、この後もっと必要な時が来るのではないか」と迷い続けている。
    誰とも共有できない思いを抱えてひとりぽっち、何という孤独だろう。

    その彼が最後に決断したのは、魔女の策略で殺されたエバを蘇らせることだった。
    そして蘇ったエバはマグの思いを受け継ぎ、島の男たちによって磔になった
    リージャを蘇らせる。
    ラスト、リージャの長台詞で「この魔法を永遠に使わず、愚かな人間どもを
    見届けてやる」と宣言するが、それよりマグの言葉で心情を聞きたかった。
    多くを語らない彼が、一度は兄の願いを断ったのになぜエバを蘇らせたのか。
    そのエバは冒頭リージャに対して「私の心臓が役に立つなら喜んで差し出す」と言ったが
    出会ったばかりのリージャにそう言えるのはなぜか?

    たぶん「他者のために自分の命を差し出す者」を蘇らせ、永遠の命を授けるのだと思う。
    だからエバを選んだのであり、エバはリージャを選んだのではないか。

    個人的にひとつ気になったのは魔女のキャラ。
    あんなに酔いどれのぐだぐだ魔女でなく、クールで計算高い魔女でも良かったと思う。
    見るからに怪しすぎるキャラでは、人を騙すのに説得力が弱い。
    普通の人に見えて、マグの心情につけ込み目的を果たそうとする魔女でも良かった。
    もっとも、彼女の熱演で舞台に強烈なスパイスが効いたのは確かだ。

    メガバックスの4作品、堪能させていただきました。
    芝居の醍醐味のひとつは、普遍的な人間の心理を際立たせる
    様々なシチュエーションですが
    そのバリエーションの豊かさが大変楽しかった。
    滝さん、これからも素晴らしい作品を見せてください。
    とんでもない企画、本当にありがとうございました。

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    2016/05/07 23:19

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