Collected Stories 公演情報 Art-Loving「Collected Stories」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    女性作家2人の人間ドラマ
    女性二人の6年間にわたる共同生活...そこには文学という共通する芸術が介在する。その関係性は、ベテラン作家の発表する予定のない「自伝的小説」を巡り歪になる。いつの間にか同居の新進作家が謎の女に変貌を遂げて出現する感じである。虚実綯い交ぜにしたような芸術論、人生観が濃密な会話として紡がれるようだ。
    (2時間15分 休憩15分)

    ネタバレBOX

    思い出は、人の数だけある。その”想い“は個人(所有)のようにも考えられるが、文学(表現)が過去(思い出)をより鮮明にし、それを読む人にも己自身の「人生の一部」として共感させる。文学はそのために存在しており、表現者が無上の歓びを与えているのかもしれない。しかし、常に残酷な代償をも要求する。若いリサ・モリスン(北澤小枝子サン)にはその力がまだないことを自覚させられ、老いたルース・スタイナー(鳥越さやかサン)はそれがもうないことを思い知らされたように...。

    この舞台セットは部屋に一室...上手、下手にテーブルと椅子があるのみ。なお、下手のテーブルの前には一人用のマットレスのような物が置かれている。その僅かなスペースで2人の距離感・立場が現されている。そして、その距離を示す小物が無くなった時から対等のような...芸術家として、人間としての思いが溢れるようで観応えがあった。

    梗概...登場人物は女性二人。ニューヨーク・グリニッジヴィレッジに住む、小説を書きながら、大学で創作を教えている女流作家ルースの下へ、大学の学生でその作家を敬愛する作家志望のリサが訪れる。
    二人の最初の出会いは、教師と生徒という関係であった。憧れの作家ルースのアパートでの個人レッスンをきっかけに、彼女のアシスタントとなり、2人の二人三脚の生活が始まる。やがてリサが作家として初めての批評が新聞に掲載、そして夢の出版へと話が進み、時の流れと共に、2人の関係性も大きく変化していく。その後、リサが、ルースから聞いた恋愛の話をもとに小説を書いたとき、二人の関係に亀裂が走る。

    あなたは、私の貴重な思い出を盗んだのか。従順であったモリスンは切り返す。あなたは作家、自分の体験を口にすべきではない、話すことは書く欲望を弱める。作家はその欲望を常に自分のものにしておくために孤独に耐えなければならない。あなたがそれに耐えられず、過去の恋愛体験を私に話したというのは、書くことを私に譲ったに等しい...。

    派手な動きもなく、台詞のやり取りだけがドラマを支えている。この芝居は、女優二人の演技力にかかる。自分が観た回はいくつか噛みがあり少し残念。なお、演技を支える舞台技術(音響・照明)は印象深く、余韻が...。

    本当に素晴らしい公演であった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2016/04/29 00:35

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