満足度★★★★
もう少しリアリティが欲しい
人類と宇宙人との地球上での共生という題材は、否応なしに現実の人種差別やヘイト問題を思わせます。
本作で描かれる、人類社会にいつの間にか紛れ込んだ「レドモン」と呼ばれる宇宙人たちも、発見され次第、故郷の星に強制送還させられるという設定です。赤い尻尾があること以外は人類と全く変わらない姿と知能を持ちながら、市民権を得られず、差別され、排斥されようとしているという設定から、現実の社会問題を想起させられた観客は少なくないでしょう。
しかしどういうわけか、登場するレドモンたちからは、いつ捕まってもおかしくない、捕まれば強制送還させられるという緊張感が全く感じられません。悠々と食事やおしゃべりを楽しんでいたり、レドモンと人類の混血である「マジリ」専用の塾に子供を通わせたりと、レドモンである事を秘匿している様子すら全くありません。
恐らく、宇宙人という設定に気をとられがちですが、そこに必然性は無く、本作の真のテーマは家族愛だったのではないかと思います。家族の絆の物語としては、本当に良い作品です。ただ、設定にもう少しリアリティと必然性が欲しい。そうすれば、物語はより説得力を持ち、もっと泣ける作品になったでしょうし、主人公が最後にとった選択にも納得がいったのではないでしょうか。
再再演して頂ける事を強く希望します。ただ、その際はもう少し設定に深みを与えた上でお願いしたいと思います。