満足度★★★★
再演。
初演を観た印象は、ハイバイとしては普通に秀作、というもの。数十年に亘る、大約した複数の人生を、駆け足で追っかけるので、時系列的な因果関係は「後から」埋める順序だから、「実はこうだった」というオチは比較的容易に使える。人生の年輪というものの重みを伝える芝居であるというより、作者の現在の感覚(人生半ばにある者としての)を、反映した例えば老後の描写だったり、つまり人生というものに関する「仮説」の開陳というのが、この芝居のイメージに近い。
相変わらず、「痛い」人生模様のえぐり出し方はえぐい。場面の変わり方が気持ちよく、台詞や所作で「あれ?」と感じた瞬間、人物の年齢が一気に飛んでいたりする。常に的確な表現が出来ていなければ、「変わった瞬間」を気づかせる事は出来ない。
今回、初演とさほど変らないだろうと予想し、しかしハイバイの芝居はやっぱし観とくかと、公演近くなって予約した。
再演は、キャストが実は違っていた。そのためか雰囲気も少し異なっている。初演は7人、再演は6人だ。岩井秀人と岡部たかしが抜け、松井周が入った。松井氏の演技は、秀逸な箇所もあるが届いてない箇所もある。岩井氏と近い距離にある松井氏ゆえか、演出と対等な、俯瞰目線で演じているのか、と思うような箇所があった(毎回同じではなく「匙加減」をしてやっている・・その結果ハマらず外してしまったような)。あるいは、メインに演じた役(おとこたちの一人)の持つ人物としての異常さが、松井氏自身が持っている(と言われる)異常さと若干周波数が異なったせいなのか・・。
もう一点、岩井氏が俳優として立たない事はハイバイの芝居にとっては大きい。俳優岩井は表現において流麗で自在、というのも自身が書いた世界でもあり、「神」に近い存在として介入できるし、的確にそれをやる。困った時も大丈夫、と思わせるがその反面、「岩井の舞台(所有格)」という烙印がおされてしまう。 他の俳優に「舞台上の仕事」を明け渡し、役者の格闘に委ねた時、「テキスト」の力が試される事となった。