「幕末!天命、投げ売りのクマさん」「ニコニコさんが泣いた日」 公演情報 演劇企画ハッピー圏外「「幕末!天命、投げ売りのクマさん」「ニコニコさんが泣いた日」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    史実..【ニコニコさんが泣いた日】
    メッセージ性を意識した公演...この物語は有名な史実であり、戦争という最悪な悲劇にして究極の不条理を端的に表現する。人間の愚かな行為は動物をはじめ他の生命体の存在を脅かす。その演出は、戦時中における軍国主張を援用し、その理不尽な環境下では弱い立場にある動物たちへの慟哭が見て取れる。しかし、そこは単にお涙頂だいではなく、演劇企画ハッピー圏外という劇団の特長である面白く、そして優しい眼差しで見守るようだ。動物を擬人化して愛らしく、その結末は...。

    ネタバレBOX

    舞台は、前・後(客席側と奥)に区分し、奥は2段差あるだけの素舞台。客席側が動物園のオリの中、奥は柵ごしに見物する。この空間によって動物園に飼われている動物と人間を区分し、オリ外は戦時状況を現す。その時代環境であろうか、全面がダーク色で暗澹たる雰囲気を醸し出す。

    梗概は、第二次世界大戦中の東京・上野動物園...戦争の激化により、餌の調達や空襲時に逃げ出したら危険ということで、動物たちを殺処分する戦時猛獣処分の命令が出された。ライオンや熊(公演ではワニ)が殺され、次は象のジョン、トンキー、ワンリー(花子)だけになる。餌や水を与えるのをやめ餓死するのを待つことにする。象たちは餌をもらうために必死に芸(野球)をしたりするが、ジョン、トンキー、花子は終に餓死していく。

    動物園の職員達は反対したが、食糧事情の悪化などもあり、他の動物園への移送に奔走する姿に感動する。とにかく走る走る、その熱量と動物たちの愛らしさと無念さが涙を誘う。

    人間の勝手な行為によって多くの動物が死んだ。その足蹴にした人間、今、動物園にいる動物から癒しや元気、そして楽しみをもらう。悲惨な戦争から71年、人の噂も75日というが、その痛みをあと4年(戦後75年にして東京オリンピック開催年)で忘れてはならない。それ以降も同様に...。その意味で戦火が直接描かれる訳ではないが、その主張は鮮明である。

    役者陣は擬人化した動物、立場がしっかりした人物造形。そしてバランスの取れた演技力は観応えがあった。素舞台であるだけに、個々の役者の演技力が目につくが、とても魅力的(ピンクレディの衣装と歌など)に演じていた。舞台技術、特に照明は動物たちの生まれ故郷をイメージする森林の描写が美しい。
    そういえば、象を数える時、「○匹」という数え方でしたっけ。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/04/12 20:21

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