レドモン 公演情報 カムヰヤッセン「レドモン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    対象を見る目
    異物を排除し差別する人間を描いたSF作品だが、
    台詞に繊細な人間関係がにじむところがリアル。
    例えば厚労省の女と新聞社の男、夫と妻、親と子、そして少年少女・・・。
    ただ差別の根深さは解るが、設定があいまいな伝わり方だったのではないか。
    最後の小さな台詞に決壊した如く涙があふれた。

    ネタバレBOX

    舞台上高い位置に宇宙空間が広がるようなセットがあり、暗転の時が美しい。
    中央のスペースのほか、両脇の舞台下も上手く使っている。
    送電線のようなロープとそれを結びつける支柱のようなH鋼は
    人間関係の距離感を表すのかもしれないが、無くても十分表現できている。
    流れるような場面転換が素晴らしく、尺を感じさせないスピーディーな展開。

    しっぽがあるということだけが人間と違う地球外生物「レドモン」。
    排除しようとしたり、共存しようとしたり、紆余曲折を経て
    ようやく今は混血である「マジリ」を法的に認めようという声も上がって来ている。
    今はまだレドモンであることが露見すれば強制送還(?)されてやがては死ぬ。
    だが現実的には、密かにレドモンと結婚している人間も多い。
    新聞記者立川もその一人だが、思春期にある娘のルルカをめぐって悩みは尽きない。
    そんな時同僚の男が不正な方法で国の情報を入手、
    そこから社会も立川も大きな変化に飲み込まれていく…。

    「マジリ」の子どもはみんな「ひかり学習会」という塾に通っている。
    それは社会的に秘密裡ではなさそうなのに、
    レドモンと結婚していることは職場に隠す、という設定が良く解らなかった。
    マジリが法的に市民権を得ても尚、親であるレドモンが強制送還される、
    という結末もイマイチ心から納得できなかった。
    “差別なんてしない振りして、実は差別する”人間の本性を描いているのか?

    人間であろうがレドモンであるが、描かれるキャラクターがリアルで身につまされる。
    出来過ぎない父親立川(辻貴大)、おおらかに受け止めるその妻(宍泥美)、
    そしてピュアで利発なルルカ(ししどともこ)が秀逸。
    塾の先生も人間味があってとても良かった。
    帯金ゆかりさんは出てくると場をさらうようなその破天荒なキャラが
    もう一人の教師である温厚な渡邊りょうさんと絶妙なバランス。
    立川家とママ友の笠井里美さんが、潔く温かい母親を演じていて素敵だった。
    差別する側の代表である公安の男(小林樹)のいやらしさが光っていた。

    妻の命を守るため、市民権を得た娘を置いて両親は逃げる。
    「お前は大丈夫だ」と父が繰り返せば繰り返すほど、その根拠のなさが心細い。
    ラスト、ルルカは大好きな少年(橋本博人)に「どんな食べ物が好きなの?」と聞かれ
    「お母さんのお弁当」と答えながら涙声になっている。
    それを聴いて私も一気に涙があふれた。
    物語の冒頭、反抗期のように母の作ったお弁当を拒否してみたりしたルルカが
    両親と別れた今、どんな心細い気持ちだろうと想像するとたまらなくなる。

    対象を見るとき
    「違いを数えるより、同じところを見つけよう」
    そんなメッセージが伝わってくる作品だった。






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    2016/04/09 22:48

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