満足度★★★★
面白き哉。読みかへ版 『こゝろ』
2008年初演作品の再演。夏目漱石の「こころ」を新解釈した学生が卒論の相談に「先生」を訪ねる。この「先生」がいつしか「こころ」の先生に重なり、学生は「私」に重なる。実は学生はゲイで、二丁目の仲間の会話から、彼が「先生」へ思いを寄せているらしい事が分かったりする。女性役も男優が女装で行う。男性らしいゲイと、おねえキャラのゲイ(現代)が、中盤からじっくりと展開される原作「こころ」の世界では男と女の役となる。そこに「新」解釈が徐々に入り込んで来るが、昔十代半ばに読了して以来の文学作品の立ち上がって来るわくわく感が、新解釈の挿入にも邪魔されず、それとして見れた。いずれにしても、人間の欲と恋情とエゴに露骨に直面する話には違いなく、昨秋みた演劇倶楽部『座』の「友情」に重なった。(立場は逆になるが)
最近演出者として名前を見る関根信一氏の作演出舞台という事で、初観劇した。この劇団の「決定的な」個性を知らずに観、今ネットで確認した所だが、芸術の世界では今や「異種」ではなくなったのだろう(むしろ本流とも)。舞台上の特徴は、「男」がオネエ的装いで女性を演じる点ぐらいか。これを武器にもしている。 今後気になる劇団になった事は確か。
主役「先生」に尾崎太郎を当てたのも秀逸、がっつり演じる姿から、謎めく東京演劇アンサンブル演技メソッドなるものに、思い巡らした。
space梟門、既に3度目。