誤人(ごにん) 公演情報 企画演劇集団ボクラ団義「誤人(ごにん)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    面白いのは間違いないが……
    面白かった。休憩無しの2時間30分という上演時間だったのでちょっと構えていたが、結果的にひきこまれて時間は気にならなかった。

    面白かったのだが、
    脚本の骨子がそもそも受け入れがたいという個人的な好みの問題と、
    普段観劇している劇団の会話劇のレベルと比較してしまいもっとブラッシュアップできるのではと思ってしまったというのがあり、結果的には☆3.5といったところ。
    ボクラ団義さんが普段会話劇というジャンルの公演をされているわけではないことを重々承知しているし一観客が上から目線で言うことではないこともわかっているのだが、そう感じた観客もいるということ。ただそれだけです。


    映像の使いかたが巧み。
    これも個人的な好みになるがオープニング映像の感じはかなり好きな部類だった。
    (残念ながら、映像は中段より上くらいでないと綺麗に見えないかと思います)

    また、途中映像効果的な演出が入るのだがそのシーンも良い。
    セリフで説明されたことを映像的に確認でき非常に楽しめた。


    以下、ネタバレ欄記載。
    (物語の骨子についての記述があります)

    ネタバレBOX

    冒頭、怒声の応酬。
    演者の皆さまの疲労も相当のことと思うが、観ているほうだってかなり疲れてしまう。
    全体の物語のことを考えると、あの怒声は妥当だ。彼ら彼女らは覚悟をもって実行しているのだから。それでも2時間30分という大作(それも休憩無し)を観るとわかって来ているのに序盤でああなってしまうとちょっと置き去り感というか、作品に入れない感じをくらってしまう。物語が進むにつれだんだんひきこんでくださるのはさすがでした。


    ボクラ団義さん、女性ファンも多いと思うのだけれど、女性ファンの皆さんはいったいどう思われたのだろう?
    レイプという犯罪がどんどん軽く感じられるつくりだと思うのだ。
    レイプによる望まない妊娠は実際にある話でそのときの判断が苦しいのは想像に難くない。客席に居ながらにしてその苦しさを想像してしまう。のに、ぽんぽんと重ねられたのではたまらない(被害者全員が妊娠していることにツッコミは入れない。そんなことはあり得るからだ)。
    これがあるから決着のシーンそしてそれまでのオーナー大田原が見せてきた立ち居振る舞いの意味がずんと重くなる、それはわかる。わかるが、やはり受け入れがたい。
    着眼点や物語のきっかけは素晴らしいのに、ちょっとしたところからこぼしていくような……そんな残念なところがあったと思う。
    もちろん、それを怒ってくれる、いつまでも許さない、自分の人生を棒に振って復讐をしてくれる登場人物達がいるのはありがたいのだが。そうじゃないのだ。納得と感情は違うところにある。ゆえに、作品としては面白くとも受け入れたくない事情が生じる。

    似た事象で、最終盤に玲子が(おそらく)ひかりと智希が写っている写真を今田に渡すのにも違和感を持った。非合法に入手した写真ではないの? きっとそのシーンの時点ならひかりはそれを許すだろうけれど、え、まったく一言も確認無しに? 「余計なお世話かも」? 過去にお付き合いしていた男性とお別れした経験のある女性として違和感しか無いシーン(ただしこれも個人的な事情なのは理解している)。写真を渡す側である玲子の人格は掘り下げられておらず、彼女が「誤っている」ことを表現しているというのならまだ納得できるが、そんな説明が作中でされていないのでせっかく作品にひきこまれていたのに「男の人の感覚だなあ」と、ちょっと作品から引いてしまった…。渡された写真を見て感極まる今田(佐藤修幸さん)の演技は素晴らしかったです。

    ポイントポイントで、わるい意味で「男のロマン」だったんですよねえ…。家族の一員をうしなって、そこから自分の人生を復讐に捧げる、とか。妻を襲った犯人を一人で捜そうとする、とか。おもてには出さずずっと抑えてきたが憎悪を抱え続けていた、とか。
    中西が最後に言った「なんかもう、わかりませんよねぇ…」はとても好きです。この人はこうだと思えました。それはきっと若狭勝也さんの芝居も大きい。すてきな淡白さでした。


    アフターパンフが配布されるのは良いが、本編だけで読み取るのが困難な情報が掲載されているとすこし悲しい。
    智希が本当に夫なのだと思えてしまうのは脚本の不備か、演出家の手腕が不足しているのか、演者の力量が不足しているのか(智希自身がひかりの子であるにもかかわらずそれを隠しているのでしかたがない部分はある/観劇後、智希が結局のところ夫なのか子なのかわからず混乱した)。氷河の職業が裏社会的なものなのだろうとは推察できても詐欺師とまでは読み取れなかった、それは観客の頭が足りないと言うことだろうか。アフターパンフは有り難いし、素晴らしい。が、甘えてほしくはない。作品を一定程度まで理解するための情報は作品の中に入れるべきだと思う。

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    2016/03/27 16:55

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