満足度★★★★
大人になって受け入れなくてはいけないことなどいくらでもある。
慌ただしさにかまけてつい時間が・・
大人になって受け入れなくてはいけないことなどいくらでもある。
そう感じさせる舞台だった。スタジオソルトは前回の「バルタン」に続き2回目の観劇であるが、今回は前回の激しい緊張感とは全く違った作風となっており、若干の戸惑いを感じるが、調べてみるとスタジオソルトには2本の路線があり、一つは前回のような社会的な事件をモチーフとしたもの、もう一つは比較的ライトな、というと語弊があるかもしれないが日常を切り取るかのような作風があるそう。
今回は後者になるようであるが、私の年代からすると、胸に突き刺さるような話であった。
高校生の頃若気の至りで、風船おじさん(確かに当時話題になっていた)の真似事をして飛ぼうとした男が試みに失敗し長年の意識不明となってしまう。その男が目覚める前と目覚めた後での人々の関係性の変化、男が過去とどう向き合い、前を向けないまでもどう落とし前をつけて人生の一歩を踏み出すか、ということを描く群像劇となっている。
物語はシンプルな印象を受けるが、それでも強く印象に残るのは、やはり話を描く椎名泉水の視点なのではないだろうか。今回は椎名泉水が作・演出、という形となっている。これも前回のバルタンとは違う点だが、これにより俳優に求められることも違うのだろう。前回は舞台上の空気感が印象に残るが、今回は俳優それぞれのイメージのようなものがとても強く印象に残る。結果として若干話の筋が見えにくくなる可能性も否定はできないが、私には充分許容範囲であったように思う。
今回の作品でも感じるのだが、スタジオソルトの作品はある種の普遍性、様々な人が見て共感できる部分がとても多いと思う。それでも一種のエンターテイメントにはならずに人生のほろ苦さをテイストとして残していく。ここがもしかしたらスタジオソルトなのかもしれない。この世界観を理解しきるにはまだもう少し時間がかかりそうだ。