『BET』 公演情報 ラチェットレンチF「『BET』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    BE(S)T…最高!
    すぐ物語へ引き込まれるような、本当に楽しめる公演である。「バレなきゃイカサマじゃないんだぜ?」というチラシに力を得て、公演内容が分からなければ、少しぐらいネタバレしても構わない?それでも説明文を引用して批判されないようにしよう。
    「限界まで追いつめられた俺は作家にとっては禁忌とも言える『禁断の果実』に手を出してしまった。それは届けられたファンレターの中にあった『ある人物の物語』だった。」この引用文だけでも興味津々であろう。

    ネタバレBOX

    当日パンフに主宰・脚本の大春ハルオ氏が「ラチェットレンチも11回目となり、コミカルサスペンス作品を3本、落語サスペンス作品を3本、カットバックで魅せるサスペンス作品を5本書いてきた」と...結論はサスペンス好きということらしいが、本作品も例外ではない。その観せ方が実に軽妙・コミカルでありながら、社会サスペンスという緊張・緊迫するようなところへ連れて行かれる。その時には既に前傾姿勢でのめり込んでいる。

    梗概の一部は書いたが、以前は売れっ子サスペンス小説家がスランプになり、編集部から最後通牒を突きつけられたところから、物語は始まる。劇中劇であり、その手法にはカットバックも観える。「事実は小説より奇なり」という言葉を聞くが、まさに自分の知らないところで仕組まれたレールを疾走する主人公・梶野達也(大春ハルオ サン)の姿が滑稽である。しかし、いつの間にかストリーテラーのような役回りを担っている。

    物語が進むにしたがい、登場人物の立場が変わり、従えたサイドストーリーも漂流するかのように揺れながら一つの目標(真実)に向かう過程が面白い。編集者の市原牧子(山﨑さやかサン)の”貴方には何が何でも書いてもらわなければ困る”と言った趣旨で脅され、自分の心と折り合いをつけながら書き進める...それはファンレターという名の告発書。そこには某市で起きた事件をなぞったものが書かれ、それをフィクションとして発表し好評を得る。いつの間にか”バレなきゃイカサマじゃないんだ”という自己防御しつつ、一方の興味本位が真実に近づいて行く。芝居という中の小説か、小説の中の芝居か判然としなくなる中で、ページをくくるように、次のシーンを手繰るようになる。

    脚本や演出は勿論、役者陣のキャラクター作りが見事。しっかり体現できており、バランスも良かった。時代の変遷にあわせ、登場人物の役者も変わるが、その錯綜するような構成でもしっかり対応する。そして何より謎解きのテンポが心地よい。
    この小説家…ギャンブルに嵌まってBET(賭ける)ばかりのようであったが、これを幾に(書ける)ようになったのだろうか。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/03/12 11:36

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