満足度★★★★★
千穐楽だった。
曼荼羅模様の如く形容し難い舞台に(今や積極的に)幻惑されながら、(千秋楽なので)人に勧められない事をまことに口惜しく思った。少年王者館を一昨年に知ってから本公演3本程(天野天街演出作品となるとその倍以上)観ているが、今回はシュールさより、情感が勝っていたと思う。緻密に意表を突くあの手この手の遮蔽膜の表面に「情」が滲み出しているかにみえた。
様々なイメージが去来する。機械的な台詞、照明、音、全てを駆使しためまぐるしい劇の経過は、何かが「解体」されていく工程である。見通しを阻む建造物を一つ一つグシャリとつぶして行くその果てには自由があって、「あらゆることが許される」状態が訪れる。明かりに照らされた夕沈(今回の主役)が佇む中、壮大な時間経過を表す音が、その「自由」の地平に鳴り響き、中で耳に残る「戦争」の轟音には、象徴的を超越して迫り、恐ろしくなった。 振付シーンも長く、毎度の天街ワールドとは言え、どこか力が入っていると感じたのは気のせいか。 拍手、拍手!