Stay of Execution 公演情報 メガバックスコレクション「Stay of Execution」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    改札口の向こう
    Bを観劇。
    久しぶりのメガバは、過去の人気作品のスピリッツを詰め込んだ盛りだくさんな作品。
    ちょっと盛りだくさん過ぎてメリハリに欠けた印象が残念。
    いつもの「パニック」と「受容」のギャップや緊張感が少し甘くなった。
    その分登場人物一人ひとりの心情や、客席への問いかけは丁寧で共感を呼ぶ。
    世界を二分する“改札口”の存在など、相変わらず設定の巧さが光る。

    ネタバレBOX

    エレベーターを降りて客席に案内されるといきなり暗い!
    「段差にお気をつけください」と言われても目が慣れていないので不安。
    その後どなたか転んで大きな音がしたが、雰囲気よりも安全を優先して
    もう少し照明を工夫した方が良いと思った。
    素敵な紙飛行機の当日パンフに感心したが、それを読むのも難しい暗さは残念。

    渋谷駅で未曽有の大地震に見舞われた地下鉄の車両、観客はその車両の中にいる。
    車両の中から荒れた渋谷駅構内を見渡すという設定だ。
    意識を取り戻した人々が記憶を繋ぎ合わせ、事実を探ろうしているとき
    来世である“無”の世界からワイスが現れる。
    目覚めた死者を無の世界へ連れて行くのがワイスの仕事だ。
    だが今回は、目覚めた5人が全員、もうしばらくここに居たいと主張した。
    101日のStay of Execution(執行猶予)を与えてワイスは去っていく。
    だがこれから始まる地獄の101日間を、その時誰も想像していなかった・・・。

    彼らが死者であることが分かっているのでストーリーはすんなり入ってくるが
    登場人物たちと一緒に謎解きをしていた、いつもの緊張感と驚きはない。
    それが物足りなくて寂しい。
    が、その分丁寧に描かれていたのは
    生者と関わりたい、外の世界を知りたい、自分の人生をもう少し考えたいという理由で
    現世と来世の狭間であるこの場所に居たいと言った5人が
    食欲も痛みも感じない退屈な空間に次第に耐えられなくなって行くプロセスだった。
    人間関係がきしみだし、精神に異常をきたす者が現れる。
    改札口の向うに行けば、魂は永遠にさすらい続けることになるというその設定が
    彼らの選択の切羽詰まった状況を物語る。
    こういう人間の弱さと、それを互いに補い合う関係が人を救うという展開は
    本当に温かく、巧いと思う。

    狭間に出入りする生きている少女が言う
    「死んだ人間より生きている人間の方が怖い」という台詞がスパイスのように効いている。

    道徳の時間みたいな直球ストレートすぎる客席への呼びかけも
    役者さんの真摯な姿勢につい一生懸命聴いてしまう。
    定番のキャラもあり、意外なカップルの誕生もありと、人物のバリエーションも楽しめた。
    一人だけ、ワイスの言葉に耳を貸さずこの狭間に残り続ける女の“忍耐”の理由が
    息子であるという設定は若干無理も感じたが、
    そこに自分と共通の強い希望を見い出していることが、他の人々と違う所以だろうか。

    冒頭の自己紹介のシーンで、BGMの音に声がかき消されることがあった。
    今後、小さくても通る声、もしくはBGMを調整する必要がありそう。

    当日パンフで滝一也氏が書いているように、
    “すべての人に確実に訪れる、しかも説明できる人はいない”「死」というものが
    メガバにとってこれまでもそしてこれからも、一貫したテーマであり続けるならば
    今後ますます既視感のない設定と、舞台装置のクオリティが求められるだろう。
    ハードルは高いが、次はいったいどんな新しいシチュエーションを提示してくれるのか、
    滝氏の豊かな想像力に期待せずにはいられない。

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    2016/02/24 05:41

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