満足度★★★★
「燐光群」的舞台でありつつ独自さもみえた清水弥生作品。
燐光群には坂手洋二でない「自前」の作家、清水弥生がいる。入団して演出助手等をやりつつ、戯曲執筆への挑戦や、何度かの舞台化をしてきた。 前作「ブーツ・オン・ジ・アンダーグラウンド」で一気に存在感を示した清水氏の、その脚本が5年の歳月をかけたというから、次作の出来はどうかと気になって森下スタジオまで出かけた。
近くて遠い、在日フィリピン人「社会」を垣間見る二時間、前作の痛快なフィクションと打って変わったようなドキュメントタッチ、にもかかわらず温かみと仄かな物語性が流れ、劇が終わる頃は拳を握り、熱くなった(最後には良い意味で肩の力を抜かせる)。
何も知らなかった自分を恥じる、という事が観劇態度としてどうなのか・・「生真面目すぎではないか」「芸術と社会運動は別物である」といった批判も浴びそうだが、この件については燐光群の芝居をみるたびに考えさせられる。 社会的な事柄を演劇にし、時に社会的な行動を促す可能性を演劇に見出すことが、「なぜいけないのか」、という問いに明確に反論できる理屈があるのかどうか、、と。
それはともかく・・ 今回はフィリピンから二名の女優を招き、いつもの俳優総出でなく選ばれた数人で作られた芝居(アジア共同プロジェクトの第一弾)。初めて(?)の森下スタジオの空間も悪くなく、何より日本人男性と渡日フィリピン人女性のカップルの「深い実感」を観客も共有できる次元の表現=「形」になっており、燐光群の舞台の中でも(言葉でなく)「演技による説明」で伝えている、言わば演劇らしい演劇だった。