書く女 公演情報 ニ兎社「書く女」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    樋口一葉が動いている。
    永井愛作/二兎社公演舞台の再演。初演は未見。演劇人永井愛は「あの名演をもう一度」的再演はやらなそうな人だ。何がしかチャレンジのしどころあっての、今回は黒木華というキャスティングがそれなのか判らないが、いずれにせよ洗練された舞台だった。生ピアノの演奏/音楽のクオリティが高い。深みがあって繊細で、僅かな色彩の違い(即ち人の心理のひだ)も逃さず捉え、並走しているライブ感がある。俳優は全てうまい。こまやかな笑い、動線や転換のスムーズさなど演出の力量も十全という感じ。
     自分は樋口文学は「にごりえ」を読んだか‥という程度だが、独特の筆の進め方が印象的で、誰にも真似できない樋口オリジナル、可憐で大胆、「天然」なイメージがあり、それが今回の役にもそこはかとなく窺えた。「天然」即ち己の持てるものをさらけ出して生きる人、とするなら彼女は生を燃焼させた人で、舞台上にはその赤裸裸な姿があった。
     後年、文壇からの批評・批判の的となるが、ある宿敵(批評家)の挑発的な質問に堂々と答える傑物ぶり、さらにその彼を友のように対する地点に一葉は立つ。成長と変化が、黒木華の身体を通した一葉に起こって行く。母と妹とのコンビネーションが絶妙。
     日清戦争へ向かう時代の世相を描写する台詞や、一葉の師匠がこぼす「朝鮮」の話など、さらりとながら、人が「時代」と無縁には生きられない証左として織り込まれているのはさすが。 とは言え‘メッセージ性’を求める向きには薄味であったかも知れない。だがどこかしら味わいある舞台だった。

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    2016/02/01 02:15

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