満足度★★★★
抱く想い
物語が始まってまもなく登場する飛び道具的な強烈なキャラクターと
ドタバタな笑い、そしてこの劇団名などから、スラップスティックな喜劇かな、と思っていると少し違った。
この物語の主人公は、奇妙な記憶障害のあるガンマンだ。家族を無残に殺された彼は、復讐のために25年も旅を続ける。
最後の仇を倒した直後に、彼が知る残酷な真実。そして、彼の決断。このためにこれまでの設定があったのか、と思うほど良くできていたのだけれど。
脚本・演出の吹原氏が終演後にツイッターに書いていた。はじめに想定していた結末のこと。それはずっと救いのないものだった。
物語としては、切実なものとなったかもしれない。けれど、それは自分たちの描くべきものだろうか。そういう葛藤。その上で彼の、いや彼らの選んだラスト。
この劇団は、サービス精神が旺盛だ、と思っていた。しかし、この舞台を観るとサービス精神という言葉だけでは収まらない。
彼らの舞台を観にきた人々に、どんなものを渡せるか。それを真剣に考えている、そういう劇団なのだろう。たとえば私たちが、誰かを大切に思う感情の暖かさを抱いて帰路に着くこと。
この舞台を観終わって、そんなふうに思った。