満足度★★★★
激動の時代を描く
観る前に漠然とイメージしていたのは、公害と闘った政治家の生涯を描く偉人伝的なものだったが、実際に観てみるとそういう作品ではなかった。
江戸の封建社会からご一新を経て立憲君主制へ。そうやって始まった明治という時代に、誇りを持っていた主人公。
長い長い鎖国が終わり、時代は音を立てて動いている。凄まじい勢いで海外から流れ込んでいく宗教や思想。まだ日本に根付いていないそれらを受け入れる者・退ける者。いや、それ以前に民主主義でさえまだ限定的なものでしかない。
そういう激動の時代の中であがきのたうつ人々。この舞台で描かれていたのは、そういう光景だった。
ここで描かれているさまざまな葛藤を、単に過去のものとはできない。そういう切実さを感じさせる舞台だった。明治から遠く離れても、なお私たちは寄るべき指針を求め続けているのかもしれない。