ツキノヒカリ 公演情報 満月動物園「ツキノヒカリ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「誰か」ではなく「全員」の物語
    観覧車シリーズの最終話。連続シリーズなので,これまでの作品を観た方も楽しめるようになっていますし,もちろんこの作品だけを観ても楽しめるように作られています。過去4作は再演なのですが,この作品だけ完全新作とのこと。それまでのシリーズの情報を補完しながら,バラバラに見えていた物語が1つの線につながっていきます。そう,この5作品は「誰か」の物語ではなく「全員」の物語でした。
    温かい雰囲気として展開されながらも,その物語の重さを感じられる公演。その重さと役者さんの熱演によって,感情がここまで揺さぶられるとはと驚きながら,最終話を見届けて参りました。

    ネタバレBOX

    架空の事故である観覧車倒壊事故が,まるで現実に起こった事故であるかのような錯覚を覚えるほどのディティールの細かさ。残された被害者の家族,そしてその周辺,それだけでなく残された加害者の家族と,その周辺。10年の時を経てようやく事故の話を語り,お互いを思いやりながらも,取り戻すことのできない時間や人に思いを馳せて,やっと悲しむことの出来た人たちの言葉に,涙を止めることが出来ませんでした。例えば,新米神様の「お父さん」という台詞は,例え分かっていたとしても泣いてしまいそうです。
    ラストシーンの白幕から暗幕へと切り替わる瞬間は,このシリーズ初めての暗幕使用ということもあって,非常に印象的なシーンでした。取り戻すことの出来ない絶望から,例え暗闇であっても前へ進もうとする登場人物の心の切り替わりが明らかになっていました。第一話の澳がなぜ天寿を全うできたかがハッキリと分かりました。こうして,最終話からまた第一話へとつながっていくのでしょう。
    照明の効果も大変美しく,手に持ったライトで人物を照らす演出,暗闇の中の舞踊,薄明かりの中の独白,そのどれもが記憶に残るシーンでした。特に澳の眼前を死神が遮るシーンで,背景に映った死神の影は,凜々しく象徴的で,見届けて良かったと感じる場面でした。

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    2015/12/20 09:04

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