泳ぐ機関車 公演情報 劇団桟敷童子「泳ぐ機関車」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    心魂震えて
    赤堀炭鉱の社長宅に「石炭は命の石」と書かれた掛け軸が見える。石炭採掘は暮らしの糧を得るためであるが、そこはいつも命の危険が隣り合わせにある。澄んだ水は冷たく、それは人の涙。その冷たい海を(石炭を食べる)機関車の蒸気で ぽかぽか にする、そんな純真な気持ちが心に響く。
    2015年炭鉱三部作の最後を飾る「泳ぐ機関車」は、流れる涙を象徴するかのような”水”による演出が印象的であった。三部作共通のラストシーンは力強い歩み...そこに未来を感じる。その胸の内には、いつも向日葵を咲かせ、笑顔を絶やさないこと。
    観劇した日は、上演後バックステージツアーが実施された。その対応は水を使用しただけに丁寧な拭き取り、キャストの親切な誘導でスムーズに見学することが出来た。
    このイベントも含め、素晴らしい公演であった。

    ネタバレBOX

    赤堀炭鉱は、筑豊のみならず日本一働きやすい炭鉱の街へ...その壮大な夢が、事故で潰える。その炭鉱主とその家族の栄枯盛衰の物語である。冒頭から悲しい...炭鉱主の息子ハジメ(大手忍サン)は、産まれた時に母が亡くなり、誕生日が母の命日という。それでも姉二人と不自由なく暮らしていた。炭鉱労働者やお手伝いの人たちに囲まれ、恵まれた生活が一転して非難を浴びる生活に変貌する。その落差ある状況変化に、人の優しさと浅ましさが滲み出る。約2時間の中で戦後混乱期、炭鉱という日本経済復興を象徴する産業を背景に、人の喜怒哀楽を描き出した骨太作品。

    炭鉱労働者・労働運動と炭鉱主・資本家という垣根を低く、その理想を掲げた事業活動、一方、父親・家族という人間ドラマ、その両面からのアプローチは幅広い世代に共感される。

    やはり浮浪者とハジメの交流、どん底生活を余儀なくされる人々への温かな眼差しが、逞しく生きていく姿を後押しするようだ。ラスト...機関車「HAJIME100」は、既に上演された第二部「オバケの太陽」第三部「泥花」(時代背景は遡る」へ力強く牽引するようだ。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2015/12/09 07:21

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