満足度★★★★
左脳的テキスト、右脳的に飛ぶ(快哉)
なぜかこれは観たかった。静岡くんだりまで足を伸ばしたが、甲斐あった。ギリシャ喜劇作家・アリストパネスの現存するテキストの一つ『鳥』は、奇想天外な話で、天(神の国)と地(人間の国)の間、つまり中空に鳥たちが国を作ってしまう。この話の筋は残しつつ、作・大岡氏は現代の話として構成し直し、現代劇としてSPACの劇場にどっかと現出せしめた。これ即ち現代諷刺劇。日本の現代・現在をちくりとやっている訳だが、時々寒くもなる。だが、寒いと感じるのはそれを寒いと感じさせる「空気」を吸って生きる己の偽らざる感覚に他ならない、という事でもある。言葉にすれば身も蓋もない事実も、それが事実なら言葉にすべきである所、我々は何を口ごもり、口にしない洗練さなどと澄ま しているのか・・と。この劇は『鳥』の翻案であると共に、アリストパネス自身が作品を通じて当時の世相や事物を刺しまくったように、日本においてそれをやる、という試みでもあった。この試みに拍手を送らずして何に拍手するものか?などと興奮を噛みしめつつ帰路についたものである。