満足度★★★★★
Team ドラフト4位 :Team ドラフト4位 旗揚げ公演『Jugend~青春~』
「ヒーローに憧れる一人の高校生が自分を変えるため、
仲間達と学園祭のステージで《 ヒーローショー 》を目指す!
様々な困難を乗り越え、
彼らは無事にステージに立つことが出来るのか――
あの頃に置いてきたものを、もう一度…。」
熱くて、弾けて、キラキラした読後感の良い青春小説を読んだような爽快感が、見終わった後に残る舞台。
子どもの頃、夢中になったヒーローも、成長するに連れて、遠い存在、思いでの一部になって行く。
それを人は「大人」と呼ぶ。
子どもの頃に見たご当地ヒーローがきっかけで、ヒーローにあこがれる一人の高校生が、自分を変えようと友達や仲間と学園祭でヒーローショーを実現する為に、目の前に立ちはだかる困難を乗り越えて行く姿を、たっぷりの笑いとスパイスのようなホロリとする甘酸っぱさで魅せる熱くて、爽快な青春に、思わず高校生の頃を思い出す人もいると思う。
「青春だなぁ~」と思う。いいな、こういう高校時代と思う私には、こんなキラキラと甘酸っぱい高校生活の思い出はないからだ。
中学3年、15歳の春に母を亡くした私は、自分の悲しみしか見えなくなった父と兄と住む私には、家での居場所はなく、悩んでも親兄弟は当てに出来ず、「これからは、一人で悩み、答えを出し、乗り越えて行かなければいけないんだ」と思い決め、まともに育って当たり前、少しでも曲がったり、グレたりしたら、「そら見たことか。あそこは母親がいないからああなった」と世間や大人に後ろ指さされてはならじと、気を張って、生きるだけで精一杯、ただただ、必死に生きてきた。
戻りたい過去も、若い頃にも戻りたいとは思わない。
それだけに、この高校生たちのきらきらした熱さと将来を考え始める思春期の不安とハチャメチャさが、甘酸っぱくて眩しい。
普段は可愛いのに、殺陣の稽古になると男っぽくなる橘奈穂さんの真琴のギャップがおかしくて可愛くて。
最初は、真琴のおっかけっぷりにちょっと引いてしまうところのある松下芳和さんの松谷が、真琴が落ち込んだ時にかける言葉と態度に、何だかいい奴だなぁと印象が変わって行く。
女手ひとつで育ててくれた母の為に、いい大学に入ろうと勉強に打ち込みながらも、最初はしぶしぶ参加したヒーローショーの練習との狭間で現役合格か人生に二度と訪れない高校生活最後の今しか出来ないヒーローショーかで、悩む横山展晴さんの広瀬はぴったりと合っていた。
最後のヒーローショーのシーンは、殺陣とアクションが本当にかっこよくて、わくわくしながら見ていた。
兵頭結也さんとヒーローに憧れる小暮の河村悠基さんの動きが綺麗でかっこよかった。
人によって、青春の時期は違う。
高校生の彼らに、今が、青春という実感はないのかも知れない。若い時の青春は、後からしみじみと振り返った時に、あれが青春だったと思うものだと思う。
高校生の時に、こんなにも熱くて、きらきらした思い出を仲間と持てたら彼らは幸せだと思う。
けれど、大人には大人の青春がある。
人によって違いはあるものの、きらきらしている、楽しいと充実している時がその人の青春だろう。
だとすれば、私の青春は今だと言える。
人は、一生の内に一度でも何かに夢中になったり、熱くなった思い出があれば、その先にどんな事があっても、生きて行けるのだと思う。
そんな事を考えながら観ていたら、ポロリと涙が頬を伝った。
見終わった後に、スカッとカラッとした爽快感のある舞台でした。
文:麻美 雪